トラウマ氏の一日
記念すべき「小市民シリーズ」第一作。1985年作。声楽家(カウンターテナー)にして稀代のエンターテイナーでもある丹羽勝海氏との出会いで生まれた一期一会の「ひとりオペラ(モノドラマ)」で、丹羽氏が主役を語り歌い演じ、台本を書き下ろした作曲者本人がピアノ伴奏し、パーカッションとソロ楽器が絡む…という演奏会形式の舞台作品。もともとは経済上の理由で(要するにお金がなくて)、作曲者本人が台本を書き作曲しピアノも弾かなければならないというギリギリの状況下で生まれた「苦しまぎれの一作」だったのだが、好評で再演されるうちパーカッションとソロ楽器が加わるようになった。ただし、楽譜は、ワープロで打たれた台本の下に図形や記号が書き込んであるという簡素なもので、かなりの部分が奏者の即興に任されている。
このトラウマ氏は、中年のセールスマン氏の一日を描いたもので、5つのシーンからなる23分ほどの作品。台本と細かいデータはこちら。
1.朝
2.喫茶店にて
3.セールス
4.白昼夢
5.夕暮れ
ちなみに、トラウマ(Trauma)というのは心理学用語で「心理的外傷」、要するに「心の傷」。元ネタは、ミミズを売るセールスマンが主人公の吾妻ひでお「トラウマがゆく」、最初のアイデアは、読んだことのないアーサー・ミラーの「セールスマンの死」。赤ん坊が燃える燃えないは(たぶん)レヴィ=ストロースの「生のものと火を通したもの」、セールスの口上は「がまの油売り」、東友引X丁目とか仏滅X丁目というのは高橋留美子「うる星やつら」、アフリカ象のくだりは山上たつひこ「ガキデカ」などなど引用(パクリ?)は沢山ありすぎて自分でもよくわからない。蛇足ながら、「だるまさんが転んだ」のところで連呼されている名前は当時の現代音楽協会の作曲家の先生たち。
上演時間:22’33” ・ 公開:2008/04/05
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台本/作曲:吉松隆
Ten:丹羽勝海
Harmonica:崎元譲
percussion:種谷睦子
piano:吉松隆
1988.2.16 第一生命ホール