瓦工事に使用するその他の材料2
瓦桟木
 
 瓦の古来からの施工方法は土葺きでした。屋根の上に「葺き土」を置き、瓦をそこに馴染ませるようにのせていく葺き方です。当然重量は重くなりますが、当時の瓦は今と違って多かれ少なかれ形がねじれているのが普通でした。その瓦を組み合わせて葺いてゆくのですから葺き土で調整を取らねばならなかったのだと思います。西日本では現在でも土葺き工法が行われています。阪神淡路大震災の被害も、土葺き工法が多かったことがその一因とされています。
一方、東日本はほとんど引っ掛け桟工法です。関東では、関東大震災後、一気に引っ掛け桟工法が普及しました。建築の世界は「湿式から乾式へ」の流れにありますが、この工法の変遷もその流れの一部と言えるかもしれません。
引っ掛け桟工法は葺き土を用いず、屋根に桟木という横棒を打ってそこに瓦を引っ掛けて置き、釘止めします。使用される桟木の種類は以下の通りです。
①    木材(杉が多い)
②    防腐処理木材
③    樹脂材
④    金属製(アルミ)
 瓦屋根の耐久性(瓦自体の耐久性ではなく)を考えた場合、まず瓦は半永久的、本谷の谷板も当社の場合はステンレスを使用しているので、まず大丈夫、棟積みもモルタルの接着力に依存しない独自の耐震工法、そうなると残された課題は、瓦桟木の耐久性と、棟の土台となるモルタルの耐久性です。解体時に何度か確認したのですが、50~60年前に施工した棟の土台モルタルも強度的に充分なまま現在に至ってます。そこで残るは瓦桟木です。
 腐らない桟木を使用するのが最良ですが、当社では防腐処理木材は基本的に使用しません。防腐処理薬剤の効果と安全性が懸念されるからです。防腐処理木材は薬剤を木に注入する場合もあるのですが、基本的に薬剤が注入されやすい木材とは腐食し易い木材に他なりません。腐食しにくい木材(ヒノキ、ヒバなど)はほとんど薬剤が浸透しません。将来、防腐処理木材が腐食し朽ちてしまったら、薬剤だけがそこに残ってしまうことになります。環境負荷を考えればやはり使用は控えたくなってしまいます。
 ならばヒノキを使えば良い、となりますが、残念ながら今のところヒノキやヒバは継続的な入手が困難なのです。
 そこで注目されるのが樹脂製の桟木です。ある大手ハウスメーカーでは数年前から標準仕様になっています。曲げ強度、圧縮強度では木材に劣りますが、瓦桟木として使用する場合は問題がないと思います。また、釘の引き抜き強度(引き抜き難さ)では、木材より上と感じます(データではなく実感です)。
 樹脂桟木は、木材より価格は高いですが、材料費全体に占める割合はそれほど多くありません。大雑把に言って当社が工事を行う平均的な屋根の大きさだと、2~3万円ほど工事代を追加していただければ樹脂桟木にできます。
 今のところ、当社では桟木には杉材を使用し、棟際、谷際といった浸水の可能性が高い箇所のみ樹脂桟木を使用しております。
 最後に桟木の水抜き穴(ウォーターホール)に触れておきます
 瓦の下に水が浸入した場合、または瓦の下で結露が発生した場合、流れ落ちようとする水が瓦桟木で遮られてしまい逃げ場がなくなってしまうと、ルーフィングを止め付けたステープルの穴や、桟木を止めている釘穴から屋根板の方へ浸入してしまう場合があります。
 したがって、この水が桟木に遮られないよう、桟木の下部を適当な間隔で削り取って水の逃げ道を与えてやります。逃げた水はそのまま全体に薄く散らばって流れるか、最後は軒先に来て外部に吐き出されてしまいます。
 このような水抜き穴の付いた桟木も広く普及しています。また、普通の桟木を用いる場合は、屋根に事前に縦桟(キズリテープというものを使用します)を流しておき、その上に桟木を打ちます。縦桟がバックアップ材となり桟木を浮かせ水の逃げ道を作るという工法です。
 先に、F形の瓦は防水性能が劣ると書きましたが、F形の施工マニュアルはその発売当初から、この工法を工事店に義務化しておりました。屋根材の欠点を2次防水層で補うという考えです。
 
  1. III.本谷
 数年前まで、本谷には銅板を使用するのが、我々の地域では一般的でした。当社も0.4mm厚の銅板を使用していたのですが、2000年に社内で議論が持ち上がりました。「最近、緑青ののった銅板屋根を見かけない」「かつて緑青ののっていた銅板屋根から緑青が落ちてしまった」という話が発端です。
 結局、原因は酸性雨の影響と判断しました。銅板の耐久性は緑青の被膜があるからです。それが酸性雨の影響で流れてしまう、となれば、今後、本谷に銅板を使用することに疑問が生じます。
 それをきっかけに当社では2000年に、本谷板はステンレス(厚み0.35mm)を標準仕様とすることに切り替えました。
Chapter 7
実戦! 屋根の知識
本当に知りたい事は、現場にあります。〜これが瓦の最新リアルレポート〜