瓦工事に使用するその他の材料3
緊結材
 
 この項は少し長くなると思います。ご了承ください。
 瓦の緊結材に求められる性能は①耐候性(錆びない)②保持力(引き抜け難い)③止水性(水が伝わり難い)といったところだと思います。
 この中でもっとも重要なのは①の耐候性です。
 瓦を止め付ける際、瓦に開いた釘穴に釘を差し込んで打ち込みますが、この釘が腐食してしまうと、釘穴の中で錆が太って内側から釘穴を圧迫し、その後、瓦にひびが入るか、ぱっくりと割れてしまうのです。
 したがって瓦の穴に差し込む釘、ビスは必ずステンレスを使用しなければなりません。ステンレスとひと口に言っても、磁性の有るもの(SUS410 等)と無いもの(SUS304、305等)があります。当然、磁性のないものの方が錆び難いです。当社では必ず磁性の無い釘、ビスを使用します。但し、強度は磁性の有るものに劣ります。事実、インパクト・ドライバで打ち込んだ時に、頭がちぎれやすいビスに遭遇したことがありました。同じステンレスといってもメーカーによって品質の差があるようなので、製品の選定には気を付けねばなりません。
 ②の保持力が問題になるのは釘の場合です。ビスは一般に強い保持力が期待できます。
 釘の保持力を決定する大きな要素は釘の形状にあります。瓦工事に使用する代表的な釘の種類は、
  1.スクリュー釘 2.リング釘 3.スクリング釘
といったところだと思います。当社では、瓦の止め付けには2の「リング釘」を使用しています。いちばんの理由は他と比較し引き抜き強度が圧倒的に高いと実感出来たことです(実際に釘を打って引き抜いてみればすぐに分ります)。さらにもうひとつの大きな決め手は「止水性」です。リング釘の特徴は、釘の溝が釘を打ち込む方向に対して垂直に何重にも刻まれてます。この溝がいったん木材と噛んでしまえば、そこで水の浸入は阻まれると考えられます。他の釘は溝がらせん状に入ってますから、そのらせんを伝って浸水してゆく可能性があります。
また、2のスクリング釘は、名称の示す通りスクリューとリングの刻みを合わせたもので、一言で言ってギザギザしてます。屋根工事に使用する場合、このギザギザがルーフィングを必要以上に傷つけてしまう、と言われてます。特に実験をしたわけでなないのですが、理屈で考えればその可能性は高いと思われ、当社では使用しておりません。
 ③の止水性に話が及びましたが、ここで、2000年に瓦業界が発行した「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」(以下「ガイドライン」)についてお話しなければなりません。
2000年に建築基準法の大幅な改定があり(いわゆる住宅新法)、さらに「品確法」が制定されました。これらを受けて瓦業界も「ガイドライン」を発表したのですが、当社としてはこの内容の一部に大きな疑問を持っているのです。
 このガイドラインでは、桟瓦を止め付ける際に65mmの長さの釘を使用せよ、と書いてあります。この長さの根拠は、「釘が瓦の釘穴に差し込まれて、瓦桟木を貫通し、さらに屋根板まで貫通する長さ」であることです。
 確かに、止め付ける強度だけを考えた場合、「桟木だけに食い込んでいる」「若しくは桟木を付き抜け屋根板を突き抜ける手前で止まっている」長さに比べ、屋根板まで貫通する方が強いのは考えても分りますし、実際にデータもあります。しかし、実際にこのような工事を行った場合、小屋裏に入って屋根板の裏面を見上げれば、至る所から釘の先端が突き出ていることになります。
 溜まった水は一度伝わるものを見つけた場合、その道がふさがるまでどこまでも伝っていきます。釘と釘穴は特に水が伝わり易いのです。それでもまだ釘の先に行き止まりがあれば(木材を突き抜けず中で留まっている状態)、水の流れはそこでストップします。しかし、釘の先がどこまでも貫通し、空間に突き出てしまい、そこを伝った水が、水滴となって落下するまでになってしまったら、水の流れは止まりません。
 「ガイドライン」はこういった可能性を考慮していません。なぜなら「ガイドライン」は「風と地震に対してそれに対抗する施工法を示すもの」だからです。しかし、屋根にとってもっとも大切なことは、地震や台風で瓦が落ちたり飛んだりしないことも勿論ですが、一番は雨漏りさせないことです。
 一般に建築の場合、あるひとつの性能を強化した場合、別の性能が低下したり思いがけない弊害が新たに生じることが往々にして起こります。その最大の失敗は、断熱を強化し、暖かい家を作ってみたら、たいへんな結露が発生し、家が腐ってしまった、という事例です(この時も断熱材をきちんと施工した真面目な工務店ほど被害を受けたと聞きました)。これが「不整合に気付かなかった失敗」の例です。
 話を戻します。屋根の場合も、一般的に言って屋根材の緊結力を強化すればするほど、防水性能は落ちます。屋根材を緊結するということは取りも直さずやたらに釘止めすることですから、ルーフィングと屋根板にたくさん釘穴が開きます。穴が多ければ当然雨水の浸入箇所が多くなり、防水上は不利になります。
 問題はそれだけではありません。屋根材の緊結力の強過ぎる屋根は、メンテナンスに支障を来たします。新築の場合は足場が組まれたところで仕事を行いますが、後日行われる点検・メンテナンスの際は足場がありません。瓦屋根に上がる場合、特に勾配(屋根の傾斜)が急な屋根の場合は、滑って転落せぬよう時には瓦を部分的に外しながら上って行きます。1枚置きにスクリュー釘で止めてあるくらいなら比較的楽に瓦を外せますが、防災機能付きの瓦をリング釘で全数止めした屋根の場合、1枚外すのにもたいへんな労力を要します。時には割らないと外せない場合もあります。さらに瓦を差し込んで元に戻すのも独特のコツが入ります。瓦の専門工事業者でなければこの作業は無理です。したがって部分的に破損した瓦を差換え修理するのも、以前と比べ格段の手間と危険を回避するための安全対策を要するようになりました。
 今現在、当社がベストと考える緊結案は次の通りです。J形を例に説明いたします。但し、下記の下線部の工法は2007年4月時点では検討中であり、まだ実施しておりません。
 当社の工事エリアは「基準風速30m/S地域」です。建設省告示で定められた基準風速9段階のうち、もっとも弱いレベルの地域です。
 まず、瓦を止めるリング釘の長さは55mmを使用します。これは、J形の場合、15mm厚の桟木を貫通し、12m厚の屋根板を突き抜けずに納まる長さです。さらに瓦は防災機能付きとします。
 2階建てまでの一般住宅の屋根瓦の場合、屋根の端部(軒、袖)は瓦1枚につき3箇所止め、棟際の瓦は全数止めとします。次に軒瓦から2枚目の瓦、および袖瓦の隣の瓦は全数止めします。また雪止瓦は原則2本止めとします。残りの瓦(平部の瓦と呼びます)は、その建物の立地条件・風向きで判断しますので一概には言えませんが、原則として1階は1枚置きの千鳥止めとします。2階は、45mmのリング釘を用意し、55mmと45mmの釘を交互に使いながら瓦を止めていきます。45mmの釘を使用するのは、この長さは桟木を突き抜ける直前で止まり、ルーフィングに傷をつけないぎりぎりの長さだからです。こうすることで、55mmの釘で全数止めを行った場合より、ルーフィングに開く釘穴を1/2近くまで減らせます。
 当社も2003年5月の三陸南地震、2004年11月の強風と全国的に報道された大きな自然災害を体験しております。その時に把握した被害状況から、冷静かつ総合的(防水性、メンテナンス性も考慮して)に判断して、一般住宅における瓦の緊結方法の基準としては上記の方法で(当社の工事地域では)必要にして充分と考えます。
 また、地震に関しては、独自に棟の耐震工法を確立しております。独自と言っても、普通に入手出来る材料だけで施工可能なオープンな工法です。本ホームページで耐震実験のVTRと施工図面も公開しておりますので、そちらも方もご参照ください。
Chapter 8
実戦! 屋根の知識
本当に知りたい事は、現場にあります。〜これが瓦の最新リアルレポート〜