微細
 
な違いで良いか悪いか随分と差が生まれる。命運を分けるとも言える。
絵具の微妙な混色の割合の差。ペインティングナイフによって画面に手を入れた際の圧のかけ方で変わる層の透け方。水平線の微細な揺れ。その他諸々含め、あー!難しい!と、大抵何時間もかけて上手くいかないから唸る。
やればやるほどそんな微細なものを見抜く人間の視覚体験の奥深さには驚くのだけど。
特に絵具の色彩を判別する力は凄い。微細な量を絵具に混ぜるにはそれなりのテクニックを要するものであり、それは仕事を続けていたら自然と身に付いていったのだけど、最近ではチューブを絞るなんて事はしない。チューブを絞るとかなり大まかに絵具が出てしまうから。僕はチューブの蓋を開けた際に出る、口の先端の極めて微妙にはみ出た極少量の絵具をパレット上にこすりつけて、それを練って色彩を作る。足りなければ、色の濃度を確認しながらそれを何度も繰り返す。勿論、混ぜ過ぎてある程度の量まで出来上がった絵具をそのままゴミ箱に捨てる事もざらだ。何故ならば、絵具は一度行き過ぎると元に戻らないからである。良い作品を生み出すには必然の工程だと思い、粘る。前述のように、人間の色彩の微妙な差を判別する能力が高い分、そこにおいてぎりぎりの見えたり見えなくなる現象を生み出す勝負を挑むにはそれなりのリスクと時間がかかるのは当然。とは思いつつも絵具を捨てる際は溜息は出るが。なにせ安いものでもないし大切な資源から生み出されるものでもあるから。
またそうして大切に生み出した絵具に、ほこりとか、たまに小さな虫とかが入ってきたりするとさぁまた大変だ。まぁそんなこともざらである。出来れば食品加工工場にある様な無菌室を建てて、完全に絵具と支持体と自分しか存在しない空間で描いてみたいものである。
とまぁぼやきみたいなものだけど。
 
そこまでしないと生み出せない表現があるはずで、勿論そこまでやっても自分の作品には未だに満足など出来ていない。
2008/06/21