改憲国民投票法案情報センター
 
 
【解説】国民投票運動の規制の問題
 
 与党案は、公務員等および教育者に対して、「地位利用による国民投票運動」を禁止しています。これは、現行の公職選挙法にならった規定で、ただし同法とは異なり罰則は設けないとされています。このことで安心してよいのでしょうか.
 
 いいえ、安心はできません。罰則がなくても、規定違反を理由にした懲戒処分とそれによる脅しが現場で猛威をふるうことは、国旗・国歌法の例から明らかです。例えば、公務職場で、「今度の国民投票どうする?」と係長が係員にきくのは、「地位利用」でしょうか?これを聞きつけた課長が係長に「そんな話を職場でするとはけしからん。懲戒処分を申し立てるぞ」というのは、どうでしょうか?一体、係長と課長のどちらが「地位利用」をしていることになるのでしょうか?こんなことになったら職場は大混乱です。それがいやな公務員はみんなこの話題を避けるようになるでしょう。
 
 公職の選挙に際して、公務員や教員の地位利用による運動が禁止されているのは、党派的な争いが伴いがちな公職の選挙に際して、公務員等や教育者がその職務にまつわる影響力を行使すれば、選挙の自由や公正を害することになりかねないとの配慮からでしょう。だとしたら、利用しうるほど影響力のある「地位」にある公務員(首長や一部の上級官吏)や教育者などに対象を絞ってもよいはずです。「影響力がある」という点では、民間企業の社長だって同じことです。
 
 また、はたして、議員候補者や政党の名簿を選ぶ公職選挙の場合と、選ぶ対象の違う憲法改正の場合とで、同じようにこの種の運動規制をしてよいのでしょうか。党派的な判断が憲法改正の帰趨を決してはならないことは当然です。だからこそ、憲法第96条は、国会の発議に各議院の総議員の3分の2以上の賛成を課しているのです。こうして発議された憲法改正案は、通常の政治の次元を超える高度に政治的な問題として提起されるのであって、その是非を問う場合には、国民投票のいわば「行司役」としての投票事務関係者等をのぞいて、すべての人が主権者国民を構成する者として、投票妨害的な行為以外は基本的に自由に呼びかけの運動ができることにして、どこが問題となるのでしょうか。ほかならぬ憲法改正投票に際して、公務員等、教育者の地位利用による運動禁止の規定をおくことは、不必要、不適切です。この点は、仮に罰則規定を置かなくても、懲戒処分が可能である以上、変わりがありません。
 
 また、与党案は、当初の段階では、公務員の政治的行為の制限に関する国家公務員法、地方公務員法の規定を投票運動には適用しないとしていましたが、3月29日の委員会に提出された修正案では、「必要な法制上の措置を講ずるものとする」(与党案附則11条)とされて、「署名運動、示威行動や政党機関紙の配布」、「ビラの配布」などは、禁止し処罰するという方針に切り替えられました。しかし、この種の規定は、「あいつは公務員ではないか」と目をつけただけで、街頭での投票運動をいくらでも規制し監視できる根拠を、取り締まりにあたる警察に提供することになります。これによる投票呼びかけ運動に対する萎縮効果は、絶大なものです。ビラ配布行為への警察による取り締まりの強化、検察の安易かつ不当な起訴が、この危惧を裏付けています。
 
 
2007年4月2日 8:32
【解説】国民投票運動の規制の問題