『東京新聞』2007年5月4日
『9条』シール投票に2万8千人 憲法学者ら 『堅持』声明
戦後日本の進む道を照らし続けた日本国憲法が三日、施行六十年となった。声高に改憲を唱える安倍晋三政権下で、改正の手続きを定めた国民投票法案の成立が確実となっている。「自分の国は自分で守る」「安倍さんだけで戦争すれば」−。この日、戦争放棄をうたった九条改正の賛否をめぐって全国各地で街頭投票が展開。護憲派、改憲派それぞれは集会を開いて気勢を上げた。
憲法学者の奥平康弘東大名誉教授らの呼びかけに応じた全国の市民団体などが憲法九条改正の是非を問う街頭での一般投票を3日まで実施した。九条を「守る」「変える」の意思を一円玉くらいの色つきシールを張ることで表す。4月20日から32都道府県の91カ所で行い、主催者によると、投票総数は2万8461票。「守る」は79%、「変える」は11%、「分からない」は10%だった。主催事務局の野田隆三郎岡山大名誉教授は「大多数が九条を守りたいということがはっきりした。政治の世界で改正に向かう現状は残念」としている。
憲法学者でつくる「全国憲法研究会」(森英樹代表)は三日、「日本国憲法施行六十周年にあたって」との声明を発表、現在の政治状況に深い憂慮の念を示した。
声明は「日本国憲法は引き続き、これを堅持し発展させるべきだ」とし「大日本帝国憲法(明治憲法)のもとで侵略戦争に突き進み、膨大な加害責任を残して敗戦に至った」と指摘。
研究会として「今後も平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を守る立場に立って学問的研究を展開する」としている。
街角で論憲
大勢の人でにぎわうJR新宿駅。「とめよう戦争への道!百万人署名運動」のメンバーら約二十人が投票を呼び掛けていた。すぐ隣で「変えたら、ヤバイことになっちゃうよ」と歌声が響く。
東京都町田市の大学三年岡本勇輔さん(21)と神奈川県秦野市の同長島礼佳さん(20)のカップルは意見が割れた。「今までこれでやってきたからそのままでいいんじゃない」と岡本さんは「守る」。長島さんは「今の日本は弱い感じがする。北朝鮮が心配」と「変える」。意見の相違は「いつも通り」と笑った。
買い物に来た豊島区のホスト藤田隆行さん(21)は迷わず「守る」に。「当たり前です。世界で戦争が起きてるけど、日本はしてほしくない」。しばらく考えた末に「変える」に投じた世田谷区の会社員松村暁宏さん(27)は「このままだと、どんどん煮詰まる感じ。かといって今までの良さも残したい。まだ迷う」。
埼玉県越谷市の高校三年男子生徒(17)は「戦争とか言われてもよく分からない」。「守る」とした別の男子生徒(17)は「言葉で解決できるはず」。ただ、憲法の学習は「やってない。中学でも『(教科書に)線を引いとけよ』だった」と話した。新宿では二時間で約千二百八十人が投票し、77%が「守る」だった。
米軍横須賀基地のおひざ元、神奈川県横須賀市の京浜急行横須賀中央駅前。「横須賀市民九条の会」などが投票を呼びかけた。米軍兵士は投票には無関心な様子。
「九条って何?」と照れ笑いしながら「守る」に投じた横須賀市の中学三年押本文さん(14)は「授業中に寝てたからよく知らない。でも、戦争できるようにするなんて初めて聞いた」。一緒にいた同級生が「安倍(晋三首相)さんだけで戦争やればって思う」と言うと、押本さんは「彼氏が『戦争に行く』って言ったらどうしよー」。
三歳の娘を連れた同県三浦市の会社員橋本純さん(34)はかなり迷って「守る」に。「改正されたら『すぐ戦争になる』と危機感をあおられると怖い。いじめだって、子供の人権問題。九条以外のことも重要と思う」
硬い表情で「変える」とした横須賀市の会社員佐伯崇さん(26)は「北朝鮮や中国が攻めてきたとき、やっぱり武力が必要じゃないですか。何もせず、ただやられて死ぬってのは嫌だな」と語った。 (森川清志、大村歩)
『宮崎日日新聞』2007年5月4日
「9条、戦争反省の誓い」 護憲団体、投票法案など考える
憲法記念日の3日、宮崎市内でも護憲派団体などの集会があった。改憲の動きが加速する中、戦争放棄を明記した憲法九条の意義や、教育と愛国心、議論されている国民投票法案などについて考えた。
憲法と平和を考えるつどい(日本科学者会議宮崎支部、宮崎民主法律家協会主催)は、宮崎市中央公民館に約110人が集まった。鹿児島大の木村朗教授が「憲法改悪ストップ!!のために何をすべきか」と題し講演した。
木村教授は戦後、憲法が連合国軍総司令部(GHQ)の草案を基に作られたことに触れ「改憲派は占領軍が作った占領憲法と主張するが、草案の基になったのは民間から出された試案だ」と語り、戦争放棄をうたった憲法九条については「戦争責任の免責を図るためだけではなく、植民地支配を受けたアジアに対し反省と謝罪を含めた誓いもある」と主張。また、安倍晋三首相に国民投票法案の撤回を求める文書を送ることも決めた。
『愛媛新聞』2007年5月4日
護憲派、改憲派、憲法論議深く熱く 愛媛県内
憲法施行60年の節目となる憲法記念日の3日、愛媛県内では護憲派と改憲派が松山市でそれぞれ集会を開いた。憲法改正論議が加速し、改正手続きを定めた国民投票法案が成立に向け大詰めを迎える中、双方の立場で憲法の在り方について論議を深めた。
護憲派は同市道後町2丁目の県民文化会館で「5・3愛媛憲法集会」を開き、約1500人が参加した。
実行委員会代表委員の立川百恵さんが「教育基本法改定や国民投票法案の国会での採決は問答無用。学習の輪を広げて平和憲法を守るという私たちの思いを主張していきたい」とあいさつ。東京大大学院の高橋哲哉教授が「日本はどこへ行くのか」と題して講演した。
一方、改憲派の日本会議県本部(久松定成会長)は、松山市湊町7丁目の市総合コミュニティセンターで憲法講演会を開き、会員ら約200人が参加した。
久松会長が「時代が進む一方、長く変わらなかった憲法改定の機運がようやく国民間にわき上がってきた」とあいさつ。参議院憲法調査特別委員長の関谷勝嗣参議院議員(愛媛選挙区)が「憲法改正への道」と題して講演した。