『毎日新聞』2007年4月30日
メディア事情:国民投票法案にメディア規制 「民放狙い」渦巻く不満
衆院を通過した憲法改正手続きを定める国民投票法案にメディア規制条項が盛り込まれたことに民放各局が反発している。
法案は、一般の人に賛否を呼びかける国民投票運動に関し、(1)NHK以外の放送局などに対し、政治的公平や事実を曲げない報道などを定めた放送法の規定に留意する(2)政党や団体の有料CMの放送を投票日前14日間禁止する−−ことを定めた。こうした規制条項は放送の自由を制約するとの批判が出ており、日本民間放送連盟(民放連)は「看過できない」と削除を求めている。
今月27日、参院憲法調査特別委員会の報道関係者に対する参考人聴取。渡辺興二郎・民放連報道小委員長(テレビ朝日)は「報道機関に対する一切の規制は不要だ。国民投票法案には放送メディアとしては看過できない点が散見される。民放に限定されていることに違和感がある」と不快感をあらわにした。
3月になって追加された留意条項について、法案提出者の船田元氏(自民)は17日の同委員会で「最近のテレビ番組では、一部の報道において内容がねつ造される事態も発生している」と説明し、関西テレビをはじめ今年に入って相次いだ不祥事が規制に結びついたことをにおわせた。
田北康成・フェリス女学院大非常勤講師(マスコミ論)は「船田氏は『新たな法規制ではない』と説明するが、民放だけを対象としたところに法案の狙いが透けて見える。放送介入の根拠規定となりうる」と指摘する。
CM規制をめぐっては、改憲反対派を中心に「財界をバックにした資金力のある賛成派による視聴者の感情に訴えたCMばかりになって公平性を欠く」と、衆院で否決された民主党案の全面禁止を支持する声が少なくない。
これに対して渡辺氏は、賛否の扱いに公平性を保つため民放連によるガイドライン策定を示唆するにとどめた。日本民間放送労働組合連合会(民放労連)の碓氷和哉委員長は「放送界が法規制に反対しながらも自主ルールを示さないことが民放不信と法規制への支持につながっている。経営側はあまりに鈍い」と指摘。民放労連は、CMは賛否セットで放送する▽低価格に設定した料金を公表する−−ことなどを柱にした試案を5月の連休明けにも提案したいという。
一方、山田健太・専修大准教授(メディア法)は昨年11月の衆院での参考人聴取で、法規制ではなく政党などCMを出す側による自主ルールでの対応を提案したが、各党が議論した跡はない。ある野党幹部は「政党は仁義なき戦いになる。放送局側を規制するしかない」と明かす。山田准教授は「与野党とも自主ルールの議論をあえて回避しているように思える。あまりにも放送の自由が軽んじられている」と危惧(きぐ)する。【臺宏士】