黒井健さんの描く絵本、お子さんと一緒に誰もが一度はお読みになったことがあるのでは?美しい原画が展示され、落ち着いた空間が広がる「黒井健絵本ハウス」にお邪魔し、展示室奥にある新緑が眩しいテラスでお話をうかがいました。
 穏やかで優しい黒井さん。お忙しい中、時間を作ってくださって…。素敵なひとときでした。
 今年30周年を迎えられる絵本作家・黒井さん。ご家庭ではどんなお父様ですか?
 「最近は大分いい人になりましたね、年をとって(笑)。もう結婚して30年ですからね、そのうちの半分は本当に背中しか見せない父親だったでしょうね。仕事場は家でしたから、今忙しいから部屋に入るなと、あんまり遊んであげない、いい父親ではなかったかもしれませんね。というのは、絵描きがやっぱフリーで独立して自分なりの世界を築いていくっていうのは、あんまり簡単じゃない。必死だったんじゃないですかね。ろくに画もかけなかったし、他人様からお金を頂くというのは大変なことで格闘してたっていうか…まあ言い訳ですけど。いろいろ反省することは多いですね。」
 子育てのヒントがあれば…と
 「やっぱりお父さんお母さんにとって30代前半〜中盤って一番忙しい時です。20代で信頼関係を作って仕事を覚えて、30代でちょっと前に出始める、仕事が出来るようになる。それで企業で言えば最前線に立つ時で、状況が見えてくる。そうすると、仕事がおもしろくなる。仕事がおもしろい人は出世する。おもしろくない人は、家庭は大丈夫なんですけど(笑)複雑ですね。だから一番大変な時期に子ども達は大きくなるし、お母さん、子どもが小さい時日曜日は疲れて旦那は寝てるとか、午前様とかね。どこの家庭も同じですよ。
 ただ、私の知人で子どもが生まれて突然9時に帰るようになった人がいます。よく一緒に飲んでいたんですが、娘をお風呂に入れるために…。いや家内に言われましたと、私は赤ちゃんがお腹にいるころから、もうすでに赤ちゃんと一緒にいるけど、男の人はそうじゃないから、私の3倍赤ちゃんと一緒にいないといけない、と。いや〜頭のいい奥さんね(笑)それが第一ヒントです。奥さんがどう関わるかって。」







 振り返って、どんな30年でしたか?
 「いろんな知り合いがいて、こういう美術館を作るって事は、すごいね!って言われることもあるけど、ちっともすごくないと思う。お金を出せば作れる。そのお金を稼ぐことが出来るとこが、すごいねって言われれば、そうかもしれない(笑)ただね、力があろうとなかろうと、みんな一生懸命絵を描いていて、結果的にヒット作が出た人が才能があって、出ない人が才能が無いわけではないんです。それを思うと、自分はとても幸運であった気がしますね。今後も続いて欲しいです。」
 「あの、一生懸命描いたものが読む人に喜ばれるかどうかはまた別問題なんです。みんな喜ばれようとして描いてるんです。だけど、反応があったり無かったり。その人の持っている才能だよ、って言われるけど、そうかなあ?じゃ才能って運か?みたいな(笑)そこがよくわからないの。だけど、30年前には絵本を描くつもりは無かったのに、次第に絵本に惹かれていった30年だったという気がします。絵本は面白い、奥が深い、と。最初は子ども向けの可愛いものを描くものだと思っていて…。でも大人でも、まあ絵と文で綴るコミュニケーションアートというか。興味深いと思います。最初、絵本をそれ程好きではなかった、と思う。なんでも、くまちゃんが出てきてかわいいのが絵本なら、つまらないと思っていたから」
 「ごんぎつね」からタッチが変わったとお伺いしましたが。
「そうあれは、絵本って子どもだけのものではないんだな、大人のための絵本であってもいいんだってことが、分かった絵本。
 運は努力の先にあるもの、努力してる時に、たまたま幸運が訪れる。みんな努力はしてるんですよ。歌を歌う人にしろ、絵を描く人にしろ。でもたまたまそうなる人と、ならない人といるじゃないですか。ちっともいいと思わないけど売れるものとか、すごくいいと思うのに売れないものとか。絶版になってしまうものでも、どうしてこれが絶版になるんだろうって(笑)」
 今後の活動はどの様に…。
 「このままでしょうね。私は、ストーリーに絵をつけるっていうのが多いんです。このストーリーに、絵をつけるっていうのがあると、すごく嬉しい。これ描きたいんだよね。でも今の腕じゃ無理なんだよね。でさ、あーでもない、こーでもないってやって、やっとこの文章と並んでてもいい絵ができたらいいなあと思ってやって来てるから、その文章に受けた感銘だとか、気高さだとか、一緒に並んでても大丈夫っていえる画をつくることで、苦しさと楽しさみたいな。それをまた再びと思いながらやってくんじゃないかな。そしたら少しはまともな絵描きになれるんじゃないかと。ホントにホントに。う〜ん。良く言うんだけど、うまい絵描きでは無くて、いい絵描きになりたいなって。いい絵描きになると言って言い続けてるという(笑)それだけその心動かされる文章が少ないですね。これはやりたいってものが。今ね作家や童話のジャンルじゃ無い人に時々かいて頂いてるんですよね。絵本をずっと書いてきた人は大変申し訳ないんだけれども、やっぱり我々と同じようにパターンがあって、大体全ての仕事にパターンってあって、それを飲み込んでしまうでしょ、すると簡単になるでしょ。それをくずしてくれる作家さんであったり、それをもう一回くずしながらつくってる作家さんであったり、全く違う考えの人の文章であったり、そういうのしてみたいなって。…ただきっと売れないだろうなって。(笑)」
 清里の印象はいかがですか…
 「うん、だんだん一層好きになってますね。私はたまたま、ここへ来てしまったなあと。全然知らなかったんですよ。清里って。ここ牧草地だったんですよ。なんていいところだろうと思ってた。えほんミュージアムのオーナーと友達で、彼に、そんな施設を作りたいとは言っていたんです。たまたま、どこどこだったら売ってくれるってさ、って聞いて、ふ〜んどこ?あそこさって、え!あそこなんだ、あそこはいいよね!って。で決まってしまった。それに、ここの林の写真をいつか絵を描こうと思って持ってたんだよね。それで話がとんとんと進んで」
 自然のなかっていいですよね。
 「最初はやはり慣れなくてね。落ち着かなかったんだけど、ここに来る度、だんだん気持ちがいいなあと。将来のことは全くわからないですが、自宅とここの比重が一緒になるといいですね。理想ですね、だけど先を計画して生きれる商売じゃないんです、私らは。生活設計は出来ない(笑)」
 最後に読者の方にメッセージをお願いします。
 「あの〜やっぱり子どもが大きくなって後悔しないように、つきあってください。(笑)」
 終始、和やかに語ってくださり、クールでいて、ほのぼの暖かい、絵本から受ける印象と同じように、どこか懐かしい感じがする黒井さんでした!
絵本は絵と文で綴るコミュニケーションアート。
黒井健絵本ハウス
http://www.kenoffice.jp/
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