●ヒバは天然更新力が強いため、人工造林はほとんど行われてこなかった。国有林が試験的に取り組むほか、一部の篤林家が行ってきた程度である。20年ほど前から、スギ材価格の低迷を背景に、民有林においてスギからヒバへの転換が盛んになってきた。
●青森県でヒバが注目されるのは、日本におけるヒバの8割が青森県に分布し、藩政時代以前からヒバが地域経済を支えてきたからだ。耐陰性が強く、二百年三百年を生き抜いて、大木に成長する。材としては、湿気や腐れに強く、極めて高い耐久性を持つ。青森県人がその生態に自らの気質・生き方を重ね、特別な思いを有する樹木でもある。太宰治も名作「津軽」の中で、「その古い伝統を誇ってよい津軽の産物は扁柏(ヒバ)である。林檎(リンゴ)なんかぢゃないんだ。」と書いている。郷土と書いて、「ごうど」と読む専門用語がある。ある樹種が長い期間の自然淘汰を経て立地環境によく適応して、天然で生育している適地をいう。ヒバは、青森の郷土樹種なのである。
●主な分布域は、ヒバ林が藩有林として抱えられていたことから、現在ではほとんどが国有林にあり、ヒバ林であるところでは天然更新による育成が中心となる。近年ヒバの植栽が盛んに行われているのは、スギ単層林から複層林への移行が推奨される中で、ヒバが好まれている。ただ、適地適木が原則であり、流行化に対しては慎重な対応が必要だろう。
●県内では毎年500㌶ほどの造林が行われているが、ヒバの割合が増えており、樹下植栽(上木がある状態でその下に苗木を植栽すること)ではほとんどにヒバが植えられている。現在民有林におけるヒバ人工林面積は1692㌶あり、うち1585㌶がここ15年以内に植栽されたものである。
●写真は上層木がスギ、下層木がヒバの複層林である。55年のスギ単層林を200本/㌶にまで抜き伐りし、その下に1500本/㌶の密度でヒバを植栽した。植栽後、7年経っており毎年下刈りを行っている。今後は、スギの間伐とヒバの間伐が必要となっていく。