女性の権利と健康に関する講演会
 
2月にタシケントより車で1時間のグリスタン市で活動する同期のソーシャルワーカー隊員から、配属先での企画を考えていて、「何か一緒に活動したいね。助産師さんから女性の健康について話をしてほしい」と提案された。同期隊員が配属されているNGO組織は主にAIDS、人身売買に関する活動に携わっている。シルクロードの面影を残すブハラ市の病院で活動するもう一人の助産師隊員を含め、具体的にどんな講演内容にするか話し合ってみた。3人それぞれの配属先で活動する中でわかったことは、ウズベクの女性の8割以上が貧血(鉄欠乏性)にあること、特に地方では家庭の事情や医療機関へのアクセスの悪さで受診できないこと、DV(ドメスティックバイオレンス)が多い事など様々な問題がわかった。
2000年9月に開催された国連ミレニアム・サミットで表明された「MDGs(ミレニアム開発目標)」
には以下に中心的目標8項目がある。
 
1.極度の貧困と飢餓の撲滅
2.普遍的初等教育の達成
3.ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
4.乳児死亡率の削減
5.妊産婦の健康の改善
6.HIV/エイズ、マラリアその他の疾病の蔓延防止
7.環境の持続可能性の確保
8.開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
 
マハッラの住民を中心に、登録青年ボランティア、地域政府女性団体関係機関を対象とし、MDGsの3、5に焦点を当て、女性の健康とジェンダーに関する講演会を4月の最終週末に開催した。
 
 
マハッラ(mahalla)とは中央アジアの都市や農村部の街区または地区社会のこと。マハッラの住民はイスラームの礼拝堂であるモスクやマキタブ(初等学校)、パン焼き釜などの共有、結婚式や葬儀などの人生儀礼への相互参加、日常的な相互扶助や共同作業(労働力の無償提供)などを営むことによって築かれている共同的な社会である。ウズベキスタン政府はマハッラを行政機構の末端に位置づけ、治安や福祉、衛生に責任をもつマハッラ運営委員会の制度を導入している。
というわけでマハッラのリーダーのかけ声は『鶴の一声』。一般的にはルーズだったりして、ウズベク人の行事の集まりは良い方ではない。しかし、マハッラではどういう連絡網が回っているのか集まりが良い。講演会当日は30分前からマハッラの住民達が集まっていた。30分前行動は滅多にないことなので驚いた。
 
場所は同僚が活動するグリスタン市、講義の内容は、①女性の生物学的特徴、②世界の女性の健康問題、③妊産婦死亡の現状、④ジェンダーの差別、⑤ウズベキスタンの女性の貧血罹患率、⑥貧血の症状と女性の体への影響について、⑦女性の健康と食生活、⑧ウズベキスタンの人々の食生活の問題点と改善点などについて。
ウズベクの食生活は脂質、炭水化物、砂糖の摂取がかなり多い。地元の食材で鉄分を多く含む食品はドライフルーツやナッツ類。海が無いので必然的に肉食になるが、一人当たりの摂取量は栄養所要量を十分に満たす量ではない。今回は地元で手に入る食材を利用し、卵、バター、砂糖を使わないお菓子を準備し試食してもらった。
 
参加者は予想では10〜20人来ればいいほうかな…と思っていたら実際には40名位集まった。”さすがマハッラのリーダーの一言!”と感じた。20〜30代の女性の参加もみられたが、全体の2割位。40〜50代の女性の参加が目立っていた。聴講する態度も積極的だった。
ウズベキスタンはイスラム教徒が9割を超えて存在する国。日常の儀礼や習慣はイスラム教に基づいていても、生活の中での宗教感覚は日本の仏教の宗教感覚と同じように希薄であり、他のイスラム圏に比べると生活の中での宗教戒律の厳格さは強くない。ウズベク人の女性にも普段の生活の中でジェンダーの差別がある。講義で世界のジェンダーの問題の情報を参加者が知ったとき、共感する反応を示したいた。この様子を見て、ジェンダーとリプロダクツヘルスへの意識を目覚めさせることに繋がってくれていればいいなと思い、参加した女性リーダー達がマハラの住民に対して啓蒙してくれる期待をもった。
ウズベキスタンでは毎年、年に2回物価や公共料金などの値上げがあるが、給料の支払額は年に1回だけの値上げである。輸入品は高額、国内のインフレの上昇(物によっては昨年の2倍)があり、物資は豊かにあっても給料の安い国民の生活は苦しい。この国の物価は高い。本当に高い! WHOのデータではウズベキスタンでは貧血女性の割合が物資があるにも関わらず年々増えている 。物を自由に購入できる富裕な人は一部。たいていの人は栄養所要量を満たす食品を常に買うことができるとは限らない。外国からは緩やかなインフレと良い評価をされているみたいだが、生活するほうはかなり大変だ。
ウズベク人の女性に貧血が多い原因として食生活による影響が大きいのではないかと考えている。食文化、食生活を変えるのは困難。地元の料理を調味の仕方を変えずに素材を変えるか、素材を変えずに調味を変える方法でないと食事の工夫は受け入れられない。プラス、ウズベク人はあまり他の国の料理を食べようと冒険しない。今回の講演会で間食となるお菓子のレシピは紹介できたが、体と心をつくる元となる毎日の食事のメニューは考えていたが、食材の旬が終ってしまい、手に入らず紹介できなかった…。
講義終了後、何人かの参加者から質問を受けた。医療機関を受診した後の問題のあった既往妊娠分娩歴についての質問や相談が多く、適切な医療が受けられず、医療者からきちんとした説明がされていないことがわかった。首都に在住していれば、殆ど医療施設へのアクセスの悪さを心配することなく大小規模の病院を受診することができる。でも地方ではアクセスの悪さで受診できなかったり、容易に受診できない事情があったりする。地方医療の問題点も直接目にした講演会であった。
 
 
 
 
30-е апреля,2008 среда (30.04.2008)