歴史歪曲が日常茶飯事の国・中国
 
▽宮崎正弘さんのチベット紀行
 
 今日の「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」臨時増刊増大号を面白く読みました。何年か前のチベット紀行が採録されています。
 
 四川省からチベット各地を歩いて、宮崎さんが発見したのは、ダライ・ラマの写真が跡形もなく消えていたことでした。
 
 そればかりではありません。かつて法王が謁見の場として使用した応接間には、チベットの歴史が壁画に描かれていたのですが、最終場面は毛沢東がダライ・ラマとパンチェン・ラマを左右に従えている絵だったといいます。
 
 中国共産党によるチベット支配を端的に言い表している絵です。彼らはチベットの空間も時間もわがものとしています。世界から批判が浴びせられるのは当然です。
 
▽チベットは発展した?
 
 その批判に対して、人民日報は「データ」をもって反論しています。「平和解放」によって、経済、文化、医療、社会生活、教育、いずれをとってもチベットはすばらしい発展を遂げたではないか、というのです。
 
 たとえば教育です。人民日報はこう主張します。
 
。区の73県すべてに 6年制の義務教育が普及している。小学校、中学校、高等学校、大学の入学・進学率はそれぞれ98.2%、90.7%、42.96%、17.4%に達しており、青年の文盲率は 4.76%にまで低下した。
 
▽伝統的宗教、教育の破壊
 
 しかし亡命政権によると、実態はだいぶ異なるようです。かつてのチベットには、ちょうど日本の神社やお寺のように、どの村にも僧院がありました。その数はじつに6000以上といわれます。それらは宗教施設であるのと同時に学校だったのでした。
 
 ところが、侵入してきた人民解放軍は砲撃などでお寺を破壊しました。仏像は弾丸になり、石に彫った教典や仏画は道路の敷石となりました。現在活動している寺院は45以下といわれます。
 
 チベットの伝統的宗教、教育を破壊しただけではありません。中国人の移住により、主要言語が中国語に取って代わられ、チベットの教育は侵入者と妥協したチベット人に管理され、チベット人学生は法外な授業料を払わなければ教育を与えられないという差別を受けているというのです。
 
▽自己正当化の手段
 
 しかしチベット人がどんなに中国を批判しても、たとえ世界を敵に回したとしても、中国人は「正義は我にあり」と言い張り続けるでしょう。過去の歴史を否定し、みずからの正当性を主張するのが中国の古来一貫した政治だからです。これは、いいとか悪いとかではなく、好き嫌いではなく、中国とはそういう歴史の国だからです。
 
 つまり中国共産革命の思想というより、古代中国からの儒教的革命思想です。めまぐるしく変わる政体の変革、すなわち革命は天の命令によるものとして正当化されるのです。天の意思はダライ・ラマから中国共産党に移ったとすることが共産党支配の大前提だとするなら、チベットの歴史は否定の対象に過ぎず、チベット人に一分の理すら認めることはあり得ないでしょう。
 
 同様のことは日本の「侵略」に対してもいえるでしょう。少なくとも理性的日本人は歴史を実証的に顧み、検証しようとしますが、中国人には、とりわけ為政者には歴史は自己正当化の政治的手段なのです。
 
▽真実が明らかになるとき
 
 かつて毛沢東は「日本軍国主義は中国に大きな利益をもたらした。おかげで中国人民は権力を奪取した。日本の皇軍なしにわれわれが権力を奪取することは不可能だった」と語ったといわれます。
 
 しかし、近年では「靖国神社にまつられたA級戦犯は、日本軍国主義の対外侵略戦争を起こし、指揮した者である。中国はあの侵略戦争の最大の被害者である」と主張しています。
 
 いずれも政治的発言であり、そういうものとして聞かなければなりません。
 
 もし近代歴史学的な意味で、チベットの、あるいは日中戦争期の歴史の真実が明らかになることがあるとすれば、それは共産党支配の時代が終わったときでしょう。しかしそれもまた新たな政治性が加味された歴史のはずです。
 
 
平成20年4月17日木曜日