世界化した中国の権力闘争
 
▽中国人の病気
 
 1つの妖怪が世界中を徘徊している。中国という妖怪である──。
 
 チベット騒乱を武力で弾圧して1カ月あまり、世界中で抗議の声が上がり、オリンピック開会式の不参加表明が広がると「悪いのはダライ・ラマ」と逆ギレし、パリでは聖火リレー「妨害」に反発する中国人たち2000人が抗議デモを行い、ロサンゼルスではメディア報道に抗議するデモに中国人ら1000人が加わり、さらに抗議は中国各地に拡大しています。
 
 共産党一党独裁にしがみつき、自分たちの正義以外を認めない19世紀の妖怪がいまぞろ21世紀の現代に目を覚まし、世界に毒をまき散らしている悪夢かと思いきや、いささか趣が異なる違うようです。
 
 世界に拡大しているのは、共産主義という政治思想的妖怪ではなく、熾烈きわまる権力闘争という中国人特有の病気です。
 
 
▽管理された抗議デモ
 
 きょう発行の「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」によると、中国人たちの抗議デモはじつによく管理され、抗議活動の背後には権力闘争が見え隠れしている、と宮崎さんは指摘しています。
 
 つまり、一連の報道をよく見ると、一部には暴力化したデモがあったとはいえ、ほとんどは穏健な抗議活動で、中国国内では反胡錦涛勢力の牙城である上海や広州ではデモは発生していません。
 
 フランスのカルフールは標的にされているが、ルイヴィトンはそうではない。アメリカ系企業は攻撃対象にはなっていない。海外では大量の留学生が動員され、パリのデモはおそろいのTシャツさえ配られています。
 
 となると、当局の管理下にある抗議活動であることは明白で、宮崎さんは、胡錦涛派が仕掛けた反フランス抗議行動の消極的推進に対して、反胡錦涛派が過激に応じたか、あるいは無視したのではないか、と推理しています。
 
 
▽靖国問題と同じ構図
 
 中国お得意の権力闘争が背後にあるのではないかという指摘で思い起こすのは、小泉首相の靖国参拝に対する中国の「抗議」です。
 
 たとえば、3年前の10月に小泉首相が参拝したとき、間髪入れずに中国外相は日本大使に抗議し、中国大使は日本外相に遺憾の意を伝え、中国外務省は批判の声明を発表しました。日本のメディアはそれ見たことかといわんばかりに批判の論説を掲げたのでしたが、じつのところ中国政府の態度は抑制気味でした。
 
 つまり、激しい「反日」デモは起きず、それどころか中国政府は「反日」活動家を拘束し、「反日」デモを徹底的に押さえつけたのです。「抗日戦争勝利、反ファシズム戦争勝利60年」という絶好のタイミングなのに、完全に腰が引けていました。
 
 現実的に考えれば、日本を抜きにして経済が成り立たない中国にとって「反日」は何の得にもなりません。けれども、「抗日戦争」が中国共産党の揺りかごである以上、「反日」を捨てるに捨てられないのです。
 
 共産党政府は「日本」「靖国神社」「A級戦犯」に悪役レスラーを演じさせて、ガス抜きをし、民衆の不満が政権の足下を脅かさないよう、「アリバイ」づくりに努めている。作為的である分、首相の靖国参拝批判は抑制的にならざるを得ません。
 
 
▽これこそ妖怪
 
 今回も同じでしょう。中国が「世界の工場」ならば世界を相手に、闘争を挑んだとて、不利益をこうむるのは中国自身でしょう。
 
 しかしたとえ演技であっても毅然たる態度をとらなければ、反胡錦涛勢力が黙っているはずはありません。胡錦涛政権のアリバイ工作に対して、反胡錦涛勢力が弱腰と攻め立てる構図が、今回は世界的規模で展開されているのでしょう。
 
 ちょうど中国国内問題としての靖国問題が日中間の国際問題となったように、今回は中国国内の権力闘争が世界的な国際問題に拡大しているということになります。これこそ妖怪といわずして何でしょうか。
 
 一方、中国国内の社会矛盾はすでに危険水域を越えています。そしてこれも宮崎さんが指摘していることですが、いまやオリンピック前のバブル崩壊さえささやかれています。
平成20年4月21日月曜日