穴あきダムは洪水時の責任逃れに好都合!?
天然アユやサクラマスなど、多くの魚類が日本海から遡上してくる最上小国川。この川にダム建設計画が浮上していることはすでにお伝えしたとおりである。同ダム問題は平成18年、最上川水系流域委員会・最上地区小委員会が「穴あきダム案」を採択したのを皮切りに、同年11月末には齋藤弘・山形県知事が「穴あきダム案を採用する」と表明したことから、次第に現実味を帯びるようになってきた。しかしながら、漁業権を有する小国川漁業協同組合は反対を貫いたまま。よって全国的な事例を見ても、ダムの本体着工は不可能に近い。
漁業が反対している河川では過去に、栃木県の東大芦川ダム、新潟県の清津川ダム、和歌山県の紀伊丹生川ダムなどでダム建設が中止に追いやられており、また熊本県の球磨川水系に計画されている川辺川ダムも、いまだ本体着工に至っていない。むしろ、正式な中止決定まであと一歩のところまできているといってよい。
こうしたことからも、最上小国川においてダム建設を強行することは不可能だと考えるのが世間一般の常識だが、総じて地方の推進派らは勉強不足の場合が多く、こうした過去の事例すらご存じないのが現実でもある。知事のダム案採用表明により、「工事で儲かる」と考える人が絶えないのもそのためだろう。
ここで最上小国川ダムの概要をおさらいしておくと、ダムの建設予定地は小国川上流域にあたる赤倉温泉のさらに2kmほど上流。この地点に高さ46m、幅126mの治水専用穴あきダムを建設する計画だ。穴あきダムであるがゆえにゲートを設置することはなく、ダム提最下部に2・5m四方の穴を開けたままの形状になるという。
計画の根拠となる赤倉温泉地域内の基本高水流量は340t(赤倉橋)。その計算内容など詳細は明らかにしておらず、これもまた流域住民に不信感を与える原因になっている。
通常、ダムの放流口にはゲートが備えられており、洪水時には一部を下流に流しながら残りを貯水池に溜め込み、下流に流す流量を少なくするといった調節が行われる。対する穴あきダムはただ単に太い穴が開けられているだけで、完成後に人為的な操作が行われることはない。つまり、ほったらかしのダムということになる。
以前、新潟県内の穴あきダムを取材した際、岡本水文・河川研究所の岡本芳美・元新潟大学教授は次のように指摘していた。
「ゲートがあるダムの方が洪水調節に優れていることは誰の目にも明らかですが、責任問題に発展しない穴あきダムの方が役人にとっては都合がよいのです」
近年、穴あきダムの計画数が増加する傾向にあるが、その理由は役人らの保身が関係していたということ。ゲートを備えるダムの場合はその運用(ゲート操作)が非常に難しく、常に『誤操作の可能性がつきまとう』といわれる。
対して、最初からゲートを持たない穴あきダムなら人為的な操作が不可能なため、ダム管理者が責任を問われることもない。責任逃れに好都合というわけだ。それでも通常のダムと同等の機能を果たすのならまだマシだが、現実はそうではない。