Vol.4『サービスを超える瞬間』
前回とその前と、仕事とサービスについてとても気になっていたら、「サービスを超える瞬間」(高野登著/かんき出版)という本に出会った。ザ・リッツ・カールトンの日本支社長高野登氏が、リッツ・カールトンが大切にするホスピタリティとは、について心暖まるエピソード満載でリッツ・カールトンの哲学世界を書いている。
 
服や靴、カバンを買う時、レストランで食事をする時、コンビニで買い物をする時、公共施設に行った時、商品について電話で問い合わせをした時、空港でチェックインする時などに常日頃必ず感じてしまう、今日はこの店員さんに当たって運が良かった悪かった、というハズレの方が圧倒的に多いクジのような感覚を、本来ならばそうではいけないよとリッツ・カールトンが実践して示す、サービスを超えたホスピタリティについての本だ。
最低限のサービスもおぼつかない東京の日常で、「いかに“感動”を提供できるかがプロの仕事」という信条を掲げ続ける職場環境のリッツ・カールトン・ホテル。「「明日はまたどんな感動があるのだろう」と思っていただけるようなサービスが提供できているかどうか。それが私たちの願いであり、お客様からの通信簿なのです。」と。毎日どんなドラマが社内で繰り広げられているのかもっと知りたくなる。
 
ヨーロッパのスポーツブランドが、日本ではじめてのショップを表参道にオープンさせた。私はそのカバンを、小物と合わせると20数個持っている。表参道店ができる前は、入荷商品が少ないのでそのカバンが扱われているお店を何軒か回っては数年前から毎シーズン買い足して使うことを楽しんでいたのも、その商品に感動したから。でもこの夏、もうその表参道店には行きたくないと思った。そのお店に何度行っても、いい気分になったことがないのだ。かわいさ余って憎さ百倍ではないが、なにも感じない所には行かない方がマシ。小さいお店なので、私が毎回買っているのはデータを見ればわかるはずなのだから、「なにする時に使うんですか?」とか「あの色も持ってるんですか」とか、なにか言えることはあるだろうに、会話が広がるどころか始まらない。こうなると、帰り道にひとりで笑うしかない。このカバンの良さを紹介したくて連れて行った友人達がみんな何度も買ったり、この間も家族にも頼まれたのでショルダーバッグなど4つをいっぺんに買ったのだが、かすれ声すら聞こえなかった。(笑)ただマニュアル的な対応だけ。マニアなので、デザインはもうほとんどチェックしているから、通信販売で買えるのならそっちの方がどれだけ気疲れしないか。些細なことだからと気にしないようにもできるだろうけれど、お店に行かなくても買える選択があるのならそうしたくなってしまった。
「ありがとうございます!」と過剰に言われたいのではない。ただ、なにか他に言うことないの?このブランドで働いているのに何もシェアできる感情はないの?と疑問が湧くの。「このリュック、17インチのパソコンの持ち運びに使おうと思って」「この手提げ、書類入れに丁度いい大きさですよね」とか、「システム手帳もかわいいですね」と色々言ってみたのだけどな〜。スポーツ以外の用途に使うことに戸惑ったのかしら?
 
きっとこんな風に、一度閉ざされた客の心はその後なかなか開くチャンスもないだろうから、「サービスとホスピタリティの違い、ホスピタリティという心のこもったおもてなしはお客様に愛情を示すことである」と高野氏は言っている。
あるデパートで、気に入ったから靴を2つとも買おうと思っていたのに、どちらかを選ぶのだろうと思い込んだ店員の見せかけだけの言葉で買う気力が無くなったり、イタリアブランドの服屋で珍しく素晴らしい対応だったから褒めたらアルバイトスタッフだったり。「感動を偶然や個人の能力だけに頼ってはいけない。サービスは科学なのだから」というザ・リッツ・カールトン初代社長シュルツィ氏の言葉が眩しい。
 
「「心のこもったおもてなし」という言葉について真剣に考え、実践することです。」と高野氏は言う。たとえ個人的には興味を持てないお客だとしても、来店してくれた客には本物の愛情を示さなければならないのだろう。いつも考えて、実践しようとしていれば、正直で誠実な言動ができ、客に愛情を感じてもらえるようになるのだろうか。
お客に愛情を示すやり方は、今の時代更に難しいと思われるかもしれない。他人とのうまい距離の取り方を訓練されていない私たちは、どこまでが仕事上の愛情で、どこからが私的な愛情表現になるのか戸惑ってしまうからぎこちなくなる。
 
客を待たせないシステムや、謙虚さ、心からのありがとう、目の奥が笑ってないんですけど、、、と思わせない笑顔、それは従業員自身も本当に職場や仕事、職場の人間関係や理念、その客に集中できる喜びを楽しんでいなければ出せない雰囲気だ。
成田空港のイミグレーションでも、ただ出国や入国のハンコを押すだけじゃなくて、「いってらしゃい」「おかえりなさい」とひとこと言えばお互いの気分もだいぶ違うだろうに。そういうところは、アメリカやヨーロッパのフレンドリーさを見習う必要がある。「ホテルの温度」や「お客様の温度」についても、とても納得できる五感の感じ方なので、詳しいことはぜひ本を読んで見てくださいね! とーってもお勧めです。
 
リッツカールトンで働いていなくても、自分もその仲間だと思い込みながら行動するよう心がけることが、個人でもできることかな。感動からは感謝が生まれるって私もそう感じてました!とオレが言っても、リッツ・カールトンはきっと一緒に喜んでくれるだろう。(笑)お互いを尊敬し合うチームで仕事の成果を発揮させながら、従業員や客個人のわくわくする感情も向上させる、そんなリッツに、きっとこの本を読んだら泊まってみたくなるでしょう。
 
楽しい感情を向上させることは、その人の人生を一歩も二歩も進歩させることだ。経済的や技術的進歩も大切だけれど、そんな進歩が一番かけがえのない形で人生に反映される。自分ひとりが楽しむことは簡単かもしれない。自分ひとりのための進歩も当たり前だ。喜びや楽しさをシェアできる大勢を巻き込むことが、ゆとりある大人の役割かもしれない。
仕事もプライベートも盛り込んだ個性の発揮どころは、誰と何処でどんな規模と時間的スタンスでそういう感情をシェアし、続けて行けるかだ。他人と共有できた感動は、他人に愛情を向けることに繋がる。愛するから感動するのか、感動するから愛が生まれるのか。どちらにしても、愛はどんな職業にも不可欠で、ビジネス用の大きくて深い愛情も創っていけるものだと「サービスを超える瞬間」は教えてくれた。東京には来年初めにオープン予定みたいなので、大阪のリッツに今度行って来ま〜す。
Route to Spirit Freedom, Transmission & Philosophy Soul
Transmission & Philosophy !
深町 玲
1972 東京生まれ
1974−1979 ジャカルタ在住(インドネシア共和国首都)
1995 桑沢デザイン研究所ドレスデザイン科卒業
1995−2000 インドネシア国立芸術大学留学(工芸科テキスタイル専攻)
現在 ファッションデザイン・パフォーマンスプロデュース・執筆・旅行&イベント企画等
 
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『簡単な挑戦とリッチな挑戦の狭間で』