007
2007年9月18日火曜日
スカッと晴れた秋晴れだ。空気も程よく乾き、過ごしやすい。
いよいよ山も色づきはじめた。
じょさんの背負い篭に手ぬぐい、鎌、風呂敷。
僕の背負い篭には軍手、鎌、弁当、カメラ、レンズ、フィルム、ビデオカメラ。
いつも山の話しは聞いていたが一緒に行くのは初めてだ。
「わさび畑は遠いの?」
「そうじゃな、扇谷をずっと奥まで行ったところやでえ、そうは遠くないよ」
ハイキングをしている陽気な気分だった。山の
 
006
2007年9月13日木曜日
 じょさんの家の前の細い国道を横断し、野道を下るとそこに大きな畑がある。それを一人で切り盛りしているのだ。
 僕はその畑を見てびっくりした。一面、真っ白に花が咲いていたからだ。廃村になり、辺りはさびしく活気のない風景の中、この白さはひと際、目を潤した。
 その白い花は、そばの花だった。
 しかもソバだけでなく、里芋、人参、白菜、落花生、小豆、大根………まだまだある。
 じょさんは土の上に腰
 
005
2007年9月2日日曜日
じょさんの家で、話し込んでいると、いつの間にか日が暮れて、辺りはすぐに真っ暗になってしまう。
「兄ちゃん!もうちっとここにおれ!」
その一言で帰ろうとした気持ちにブレーキがかかる。
「暗くなっちゃうよ!」
「大丈夫じゃ。このあと、用はなかろう?」
そう言われれば、帰るわけには行かない。またここに座りなおし、話しを始めた。
「わしは昔、よう働いたで!朝は一番に起きて家族のご飯を作らなあかんやろ。寝
 
004
2007年8月27日月曜日
次の日も僕はじょさんの家を訪ねた。自分でもわからないが、ここに来ることがどうやら楽しいらしい。遠い道のりがまったく苦にならない。そんなとき細い山道も軽快に走れるのだ。
僕はじょさんの台所が気になった。次から次へと出てくるその食材の多さに驚いたからだ。
たしかに外に行けば畑はあるが、そこでできない食材だってたくさんある。
「わしは、食べることが好きで、作ることも好きなんや。山はたくさん食べ物が採
 
003
2007年8月25日土曜日
「勝手に上がって来い!」
僕はおそるおそる玄関に入った。
それでもまだそのおばあさんは玄関先に出てきてくれない。
しょうがないので勝手に上がることにした。
すると慌ただしそうに働くおばあさんの姿が台所をしきるのれんの合間から見えた。
「ボーは誰じゃったな?」
徳山村櫨原地区に暮らす徳田じょさん(77)である。
僕は疑いもなく人を招き入れるじょさんがとても親しみやすかった。それに名刺を差し出
 
 
監督新連載
『水になった村』
ー 徳田じょさんの物語 ー