根津ピアノについて
 
保持力を失ったピン板
 
ピン板とは調律ピンを保持する為の練り合せの板であるが上の写真ではフレーム(金色の金属)に隠され全く見る事ができない。ピアノ調律師は調律ピンを回し弦の張力に応じてピンを固定するのだがピン板に充分保持力がある事が大前提で製作会社も楽器相応の耐久性を考慮してしっかり作ってある。ピン板が弱いと修理する為に弦と調律ピンを外しフレームまでも上げなければピン板そのものが出てこないので厄介である。ピアノ重量のほとんどがフレームの重さであると言っても過言ではないくらい重たいパーツがフレームなのである。このYAMAHA 100号のピン板は長い年月の間に割れてしまった印象を受けた。実際に見て確認した訳ではないが調律ピンの回転トルクで推測できる。規則正しく配置された調律ピンのある部分だけ横一列10cm程連続してピントルクが全く無いのである。日頃張力の一番少ない低音部にもピン板割れと思われる症状が出ていた。はっきり言ってピン板割れは楽器を預からなければ修復出来ないので現場で出くわした時は大修理を薦めるのだが今回は番組の企画と少ない予算の為おおいに悩んだ結果、短時間の演奏に耐えられる最低限のピントルクを作り出す方法を選択した。簡単に説明すればピンを接着剤で固める事に似ていて、その作業をするためのチューニングピンタイトナーというケミカルなグッズがあるのだ。しかし割れた板が接着される事ではないのでピンの仮止めに過ぎない。早速注入して確認するが期待する程の効果は見込めず演奏会当日まで調律の保持は大変厳しいものであった。ラジオ番組なので調律には神経を尖らせたがピン板という見えぬ相手に四苦八苦。しかし80年もの間子供達に親しまれてきたピアノの音色に再会を期待する地元の人々の期待に何とか答えようと収録直前まで調律して本番では何とか音律を保ち無事終了した。一番気にしてた音律の変化は許容範囲内であったがアクションが演奏途中で壊れて出ない音が発生してしまい収録途中で応急処置を施し最後の曲までは無事音が出続けてくれた。不思議な事に演奏終了後にその音はアクションのジャックが折れて完全に音が出なくなっていた。
 
2006年6月4日日曜日