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    <description>これは、自転車に乗れなかった筆者が自転車に乗って街を走れるようになるまでの、血と汗とアザと、傷だらけの、二輪三脚の記録である&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;筆者プロフィール</description>
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      <title>１　託宣</title>
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      <pubDate>Tue, 4 Apr 2006 17:28:59 +0900</pubDate>
      <description>　「こうなったらどうしても自転車に乗らんといかんのう、ふっふっふっ」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　教官（仮名）が厳然とこう言い放ったのは、引っ越しが決まったその日のことだった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　「キャイン」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　私はこっぴどく叱られた犬のように（想像上の）耳を倒し、（想像上の）尻尾を脚の間に挟み込んで、床に伏せ（たような気分で）教官（仮名）を上目づかいに見上げた。たかが自転車ごときで、なぜここまで動揺する。なぜこれほどに怖じなければならない。自転車に乗ればそれで済むことじゃないか。簡単なことだ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　普通の人はきっとそう思うのだ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　しかし、だ。あえて自分の恥を話そう。生まれてこの方、○○年間、私にとって自転車は存在しない（はずの）ものだったのだ。平たくいえば自転車に乗れなかったのである。　こういうと、たいていの人間が「うっそぉ」と少々の哀れみと、軽蔑がない交ぜになったような目をして私を見る。「うっそぉ」といわれても、本当なのだから仕方がない。私にとって自転車、という言葉は自分とはまったく関係ないところに存在する言葉であり、それは一生自分と交わるはずのない乗り物だった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　なぜ私は自転車に乗れなかったのだろう。運動神経が鈍いせいだろうか。それとも、ビンボーで自転車を買ってもらえなかったからだろうか。母親が自転車に乗れないからだろうか。そのいずれでもあり、いずれでもないような気がする。なんとなれば、弟はちゃんと自転車を買ってもらってブンブン乗り回していたからである。いずれにせよ、私は自転車に乗れなかった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　しかし、乗れないことが致命的な問題になることはなかった。私の住むニュータウンは交通網が実によく整備され、駅までは徒歩５分。スーパーマーケットなんて、家のすぐ前にあったのだ。学校だって歩いて５分。自転車に乗る必要なんてどこにもなかった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　それに、大人になっても自転車に乗れない人にはしばしば遭遇した。マミちゃんだって、ケイちゃんだって乗れなかった。そういえば、美川憲一も「もっとはじっこ歩きなさいよぉ」のＣＭまでは乗れなかったっけ。私だけが特別じゃない、そう思っていた。時に「自転車に乗れないのぉ」といわれても「お嬢さんだから、地面に足の裏をつけないように育てられたの」なんてうそぶいてりゃあすんだのである&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　しかし、今度はそういうわけにはいかなくなった。　この度の引っ越しは職住一緒をめざし、より都心部へ進出するためのものだ。取引先へはとても近くなる。今まで電車で30分かかっていたものが、距離的にはうんと短縮される。しかし、交通アクセスがちょっと問題なのだ。電車に乗ると意外に乗り替えなどが不便で時間がかかる。もっとも効率的な交通手段は自転車なのである。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　引っ越しまであと１カ月。さあ、どうするのだ。&lt;br/&gt;</description>
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      <title>２　先行き不安</title>
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      <pubDate>Tue, 4 Apr 2006 17:27:22 +0900</pubDate>
      <description>　「まずは自転車を買うのじゃ」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　教官（仮名）はまたまた厳かにのたまった。あらがう余地などどこにもない。自転車がなければ乗れるようにならないのは当然だ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　でも、ここまで○○年間、ずっと乗らずに済ませてきたのだ。できることなら、一生自転車とは関わらずに生きていきたい。私は未知のものに対して、実に臆病なのだ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　だが、いつまでも顔を背けていられないのが現実だろう。この不況の折から、交通費の節約も重要だ。自転車に乗れば解決できるではないか。私は、自分自身をこんこんと諭しつつ、教官（仮名）に手を引かれて引っ越し先の近所の自転車屋さんに向かった。ちょうど創業祭の最中だ。私はどんな自転車が適しているのかよくわからないので、教官（仮名）の指示を仰ぎ、ハンドルが一文字で三段変速の赤い自転車を予約する。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　これで外堀は埋められてしまった。私はもう自転車からのがれられない。教官（仮名）は指導してくれるというが、本当にそれで私は乗れるようになるのだろうか。不安は増大する。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　しかし、ここまで来たらもう開き直るしかあるまい。引っ越ししたらまずは自転車の練習じゃ。自分で自分の尻をたたいてやる気を引き出す。ようやく観念したころ、教官（仮名）から電話がかかってきた。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　「やはり、関西サイクルスポーツセンターに行く方がよろしい。俺が教えると、二人の関係に問題が生じるかもしれない」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　賢明である。親しい間柄で物事を教えてもらうと、その親しさゆえに遠慮を忘れ、しばしば問題を生じることがある。そこで、関西サイクルスポーツセンターの「自転車初心者教室」を受けることにした。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　大阪府河内長野市にある関西サイクルスポーツセンターはユニークな自転車や様々な遊具があることで知られているが、ほかにサイクリングイベントや「自転車初心者教室」なども開催している。この教室では自転車に乗れない人を対象に、簡単な自転車の構造、交通マナーなども含め、自転車の乗り方を懇切丁寧に指導してくれる。以前、何かでこの教室を知り、そのときに教官（仮名）と話したことがあったのだ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　同センターへ電話で申し込むと、その年開催の教室はもう翌月の11月１回のみ。引っ越しの５日後である。あとは翌年３月まで開催されないということだった。なんというグッドタイミング。自転車は創業祭で割安で買えたし、私はついている。&lt;br/&gt;　ようやく、本当に自転車に乗れるような気が、少しだけしてきた。あとは引っ越しと教室を待つばかりとなった。行く手にはいったい何が待っているのだろう。</description>
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      <title>３　自転車トラの穴　その１</title>
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      <pubDate>Tue, 4 Apr 2006 17:23:49 +0900</pubDate>
      <description>　　無事、引っ越しが済んだ。翌日、予約していた自転車を取りに行く。自転車を買うのは、当然ながら生まれて初めてだ。なんか、番号を登録したり、保険に入ったり、意外に色々面倒なことがある。荷台やペダルはオプションだ。ともかくも自転車は私のものとなった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　まずは新居までこいつを運んでいかなければならない。普通の人ならその場からヒョイと乗って戻るところだろうが、いかんせん私は自転車に触れるのすら初めてに等しい。自転車に押されてヨロヨロしている。転がしあぐねている私を見かねて、教官（仮名）が後ろに載せてくれた。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　そういえば、二人乗りは何度かしたことがあったっけ。高校生の時、同級生の男の子の後ろに乗ったことがある。青春の後ろ姿だ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　しかし、成人してから乗るのは初めてだ（と思う）。だってほとんど自動車だったもんな。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　というわけで、十数年ぶりの二人乗り。これがけっこう怖い。カーブなんて、体が傾いて、振り落とされそうだ。う〜ん、こんなことで本当に自転車に乗れるのだろうか。またまた不安に襲われる。しかし、自転車はもう私のものだ。乗らねばなるまい。乗れなければこの自転車は教官（仮名）のものになることが決まっている。それはちょっと悔しいじゃないか。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　それから数日、自転車は乗られないまま私の部屋に安置されていた。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　こいつが出動する日は来るのだろうか。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　そんなことを考えているうちに、自転車教室の日がやって来た。何だか、自転車トラの穴に乗り込む気分だ。相当緊張している。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　現地に着くと、もうすでに何人かの人が来て待っていた。受講者の年齢層はけっこう高い。上は70歳ぐらいから、どうも私が一番若そうだ。意味なくうれしい。受講者は18人でほとんど女性だが、１人だけ男性が混じっている。自己紹介の時「営業で自転車に乗る必要性がでてきたので来ました」といっていた。横浜から来たそうだ。もうひとり、横浜から来た女性がいた。この人は修善寺のサイクルスポーツセンターが満員だったため、こちらを紹介されたらしい。わざわざ大変だな。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　ほかには「懸賞で自転車が当たってしまった」「子供にバカにされたので見返してやりたいと思って」なんていう理由で参加した主婦の人が多い。神戸から来た女性は「震災で自転車の必要性を切実に感じた」と話していた。それぞれの思いを胸に秘め、自転車教室が始まった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　講師は自転車で世界一周をしたこともあるという自転車のスペシャリストで、細川元首相にそっくりな池元さんと、同センター広報の古瀬さんの２人。今までにこの教室には１万人以上が参加し、乗れるまで徹底的に指導したという。もし、期間中に乗れなければ、補習だってしてくれるらしい。なんて心強い言葉だろう。私は一番若い（ようだ）し、絶対に乗ってやるぞ。&lt;br/&gt;</description>
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      <title>４　自転車トラの穴　その２</title>
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      <pubDate>Tue, 4 Apr 2006 17:21:56 +0900</pubDate>
      <description>　いよいよ自転車に乗る時がやってきた。ここでは非常に親切にちゃんと自転車の押し方から教えてくれる。自転車の左側にたって歩く、ということすら自転車に乗ったことのない人間にはわからない。教えられなければ、みんなヨタヨタと、自転車に引っ張られてあらぬ方へいってしまうのだ。自転車置き場から練習場へ移動して練習開始だ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　まずは22インチぐらいの小さな自転車でペダルははずし、またいでひざが曲がる高さにサドルを調整する。で、地面を交互に蹴って進むところからスタートする。歩行器の要領だ。よちよち自転車を転がしているうちに、少しずつ１歩の距離が伸びてくる。一瞬でもサドルに座ったまま、地面から足を離せるようになってくるとしめたものだ。次は緩やかな坂の上にたち、両足を上げてゆるゆると自然に下っていく。そうやってバランスの取り方を身に付けて行くわけだ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　と、こう書くと非常に簡単だが実際はそんなことはない。自転車という、今までに扱ったことのないものを両足の間に挟んで、しかもそれでバランスを取れというのだから、みんなフラフラしてる。ポテポテ転ぶ。あちこちからキャアキャア声があがる。女の声はいくつになっても黄色い。ちょっと茶色がかっている人もいるけど。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　ここまで大体２時間ぐらい。ちょうどお昼になった。珍しく体を動かしているから、けっこうおなかがすく。センター内にはレストランがあって、ちゃんとランチも出る。これがなかなか豪華なのだ。１日目の昼食は豚カツと豚汁。ボリュームもたっぷりで満足度は高い。初めての自転車に少々疲労気味だったみんなの顔も、このランチでちょっと元気が出たようだ。打ち解けあって話をしている。でも、横浜から来た男性はひとりで寂しげに黙々と食事をしている。当然だろうな。周囲はやかましい大阪のおばちゃんばっかりなんだもの。さぞ居心地が悪かったろう。それにしても、自転車の乗り方を教えてくれて、２日分のランチと保険料を含めて７千円の受講料は安い。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　さて、午後からのレッスンが始まった。このあたりになると、なんとなく修得スピードの早い人と遅い人の差がはっきり現れてくるようになる。私はとりあえず早い方のグループに入っている。ちょっと一安心。今度は右のペダルだけを付け、踏み込む練習にはいる。みんな真剣に取り組んでいる。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　と、練習場のフェンスの外から中学生がのぞいている。「あれって、自転車に乗られへん鈍くさいおばちゃんの教室やろ」（爆笑）。確かにその通り。今度は「おばちゃんがんばりなー」と声がかかる。「ありがとー」誰かが声を返した。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　気を取り直して練習を続けよう。だんだんバランスがとれるようになってきた。両方のペダルを付け、いよいよ両足でこぎだす。両足でペダルを踏み、自転車がまっすぐ走っていく。「乗れたぁ」思わず叫んだ。私が生まれて初めて自力で自転車を走らせた瞬間だ。もちろん、すぐにこけた。でも、これでようやく長年のコンプレックスから開放されるときが来たのである。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　その日は直進走行の練習で終了した。練習も終盤になると疲れてきて、みんなポテポテと転ぶ。特に私はよく転ぶような気がする。文筆業は運動不足で体力がないのだ。もちろん、この日戻って教官（仮名）に一部始終を報告したのはいうまでもない。&lt;br/&gt;</description>
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      <title>５　トラの穴脱出</title>
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      <pubDate>Tue, 4 Apr 2006 17:17:38 +0900</pubDate>
      <description>　翌日も自転車虎の穴の特訓は続く。前日の疲れが少々残っているが、もう乗れる、という自信は大きい。自転車を24インチにし、さっそく乗り始める。もう、スイスイだ。気分だけは。まっすぐ走れるようにはなったが、まだまだ曲がるのは難しい。２個おかれたタイヤの間をＳ字に走る練習をするが、曲がろうとすると、ポテ、と転ぶ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　この頃までには大体全員が乗れるようになっている。人数は昨日から２名減った。ちょっと年輩の、姉妹できていた人が昨日転んでけがをしたためきょうはおやすみになってしまったらしい。残念だ。横浜から来た男性は、すでに乗れるようになってすいすい走り回っている。なんて明るい表情で走っているのだろう。生まれて初めての自転車だもんな。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　この日はひたすら練習場の中を走る走る走る転ぶ走る走る転ぶ走る走る転ぶ転ぶ。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　昼食は昨日に引き続いて豪華だ。午後からはマウンテンバイクで、バンクを走らせてもらった。ママチャリに比べると走りにくいぞ。それでもこの頃にはだいぶん慣れてきて、バンクも楽々走れるようになっている。ところが、細かいコントロールはまだまだ不十分だった。おばちゃんが、私の前をママチャリでとろとろと走っているんだけど、ハンドルさばきが未熟なので、よけられない。叫ぶ間もなくぶつかってしまった。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　でも、前日から何度も転んでいるから転び方もずいぶん上手になってきた。柔道の受け身みたいに、コロンと転げる。天地がクリン、とひっくり返って青空が実にきれいだ。気持ちいいのでそのまましばらく天を仰いでたら、おばちゃんが心配そうにこっちを見ていた。悪いことをしたかな。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　こうして２日間の講習は終了した。ほとんど全員が自転車の乗り方をマスターした。あの70歳近い年輩の人もちょっと背中を丸めながらママチャリを操っている。残念ながら、ひとりだけまだ乗れない人がいたけど。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　最後はみんなでお茶とお菓子をいただきながらの終了式。ちゃんと修了証書ももらえる。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　文面はこんなの。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　「修了証　●●●●殿&lt;br/&gt;　あなたは第77回当センター自転車教室において所定の課程を修了いたしましたことを証します」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　こうやって達成感を与えるわけだ。テーブルでは、いずれみんなでサイクリングツアーをしましょう、といった話で盛り上がっている。みんな乗れるようになったから、相当ハイになっているようだ。そんな中、あの横浜の男性は、ひとり黙々とお菓子を平らげていた。&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　「ありがとうございました」&lt;br/&gt;&lt;br/&gt;　全員、この上なくさわやかな笑顔で講師の先生にお礼を言い、センターをあとにする。しかし、本当の苦しみはこれからやってくることをだれもまだ知らない。</description>
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