第203号 微妙な立場 02/04/20
アキシュがペリシテの武将たちに答えた。
「イスラエルの王サウルの僕であったダビデだ。
彼はこの一、二年、わたしのもとにいるが、
身を寄せて来たときから今日まで、
わたしは彼に何の欠点も見いだせない。」
(サムエル前書 29章3節)
And Achish said unto the princes of the Philistines,
Is not this David, the servant of Saul the king of Israel,
which hath been with me these days, or these years,
and I have found no fault in him
since he fell unto me unto this day?
( 1 SAMUEL 29:3 )
そもそも、イスラエルの敵であるペリシテの国の中に住むこと自体、
ダビデに従った600人は大いに不満であったと思う。
敵の地で肩身の狭い思いをしながら、1年4ヶ月もの間ここチクラグにいた。
いよいよサウル王が率いるイスラエルと戦うべく
ペリシテの国の諸部族は連合してアペクに集結した。
この600人のダビデの指揮の下、アキシの軍とともに進んだ。
ここで、彼ら600人の従者たちの心の中を考えてみる。
チクラグに残してきたのは年寄りと妻達と子供達であった。
若しも、この留守中に襲われでもしたら、ひとたまりもない。
大きな危険を孕みながらも、やむを得ずダビデの下に従って進んだ。
更に、この戦いは自分達の国イスラエルとの戦いであった。
サウロ王はともかくとして、愛するイスラエルと戦うのは不条理だと
内心不満が鬱積している。それでも、指導者であるダビデがアキシの顔を立てて
アキシ軍の一翼を担って行く、その事に真っ向からの反対を口に出せないまま
重い足をひくようにして進んだ。
ほんとうに微妙な立場に追い込まれているダビデであった。
アキシに対する「人間」としての正しい姿勢を貫いてゆこうとすれば、
従っている部下たちのやるせない気持ちが判るのでいっそう苦しみが増してくる。
でもダビデは神を畏れていたので、神のこうしたお導きに黙々と従った。
あたかも厳しい山の尾根を気を引き締めて歩いているようであったと思う。
いよいよ目指す戦場に着こうとしていた。
ペリシテの武将たちはアキシに尋ねるのであった。
「このヘブライ人らは何者だ。」
アキシが彼らにいままでのいきさつを語り、
自分は十二分にダビデを信頼していることを言葉を尽して説明したのだが、
決してかれらは納得せず、その言葉を聞き入れようとはせずに、かえって
「この男は帰らせるべきだ。・・・我々と共に戦いに向かわせるな。
このダビデを信頼して、若しもここ一番という戦いの時に裏切られたらどうする。」
と言うのであった。こうした反発がペリシテの武将たちから吹き出てきた為に、
アキシはやむを得ずダビデを呼んでこう言った。
主は生きておられる。
お前はまっすぐな人間だし、
わたしと共に戦いに参加するのをわたしは喜んでいる。
わたしのもとに来たときから今日まで、
何ら悪意は見られなかった。
だが、武将たちはお前を好まない。
今は、平和に帰ってほしい。
ペリシテの武将たちの好まないことをしてはならない。
(サムエル記上 29章6〜7節)
ダビデはここで徹底してアキシに不満を述べている。
自分にどのような間違いがあるというのでしょうか・・・と。
アキシはダビデに再度こう言って説得した。
わたしは分かっている。
お前は神の御使いのように良い人間だ。
しかし、ペリシテの武将たちは、
「彼は、我々と共に戦いに上ってはならない」
と言うのだ。
(サムエル記上 29章9節)
ダビデと彼の従者たちは朝早く起きてペリシテの地に引き返して行った。
神がこのように導かれたことがダビデにはっきりと分かった。
従者たち600人は不本意な戦いに臨まずに帰れることを内心喜びながら
妻子の待つチクラグへ急いだ。