湯浅誠著『反貧困』(岩波書店、 2008年)
湯浅誠著『反貧困』(岩波書店、 2008年)
読もう読もうと思いつつ、読んでいなかった本。ようやく読めた。
分かりやすく、なかなか面白かった。この本で湯浅は、貧困問題を格差の是非をめぐる議論と一応切り離し、憲法25条(「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」)の理念にたちかえって論じている。貧困を金銭の不足というより、潜在能力(capability。センの概念)が奪われた状態、「溜め」のない状態として定義したところは、実際に困窮した人々の状況をうまく言い当てているように思う。ブルデューの「文化資本」概念もそうだが、「豊かさ」の問題にはもともと、数値化できる部分と数値化しにくい部分とがある。ここでは前者の部分はもちろん、後者の部分もきちんと考慮に入れた議論になっており、その点が好感が持てた。
「わざわざ抽象的な概念(「溜め」)を使うのは、それが金銭に限定されないからだ。有形・無形のさまざまなものが〝溜め〟の機能を有している。頼れる家族・親族・友人がいるというのは、人間関係の〝溜め〟である。また、自分に自信がある、何かできると思える、自分を大切にできるというのは、精神的な〝溜め〟である。」(同書79頁。括弧内は太田による補足)
この「溜め」を持たない層がこの国の社会で広がっていることを湯浅は指摘する。そうだとすれば、それはやはり怖いことである。「溜め」の内実とその機能をより具体的に明らかにしていくことと、必要とする人に、必要な時に「溜め」が行き渡るような仕組みを考え出すことが、将来的には重要になっていくだろう。というか、なっていかなくてはならないだろう。課題は大きく、そして多岐にわたる。人文系の研究者にとっても、この問題は決して他人事ではないように思えた。740円。
2009年3月29日日曜日