(アップデート : 2009年03月30日)
(アップデート : 2009年03月30日)

















ノーブス (Stella NOVUS) の効果は凄い!
パイプオルガンのペダル音が風圧をともなって再生されると同時に、キックドラムのアタックがスパッと立ち上がってパッと止まりオーバーシュートが出ない。この両立はかつてのスピーカー・システムでは物理的に不可能であった。
リスニングルームの悪影響がキャンセルされるため、「ステラ・ノーブス」の追加により音場はよりクリアーで見通しよく広がり、音像はさらに実体感や温度感を増して、音楽の持つ情念や官能と言ったエモーショナルな部分をも的確に表現できるようになる。
つまり、メイン・スピーカー・システムが元々持っていた能力である忠実度が増してハイファイ感が向上すると同時に、音楽が熱くノリが良くなるという、素晴らしい体験ができるのだ。
シンフォニーでは、オーケストラの幅や奥行きさらに空間の高さが増すと同時に、個々の楽器の密度も増し、その定位もはっきりする。
本来サブウーファーが関係しないと思われていた女性ヴォーカルなどでもその効果が顕著だ。歌い手の立っている音場がフワーッと大きく広がり、その中にバックのコンボや歌手がボディ感を増して浮かび上がる。歌っている女性が血の通った人間であることを実感できるようになるのは感動的だ。
フリーでオープンな低域、十分な量感がありながら締まった低域、ボトムエンドまでしっかり延びたディープバスは、いわゆる従来のサブウーファーからのものとは異次元の世界である。つまり、いままで生演奏でしか味わうことのできなかった、「軽々とした重低音!」なのだ。
単なる超低域の増強だけではなく、音楽の訴求力が増すという、かつて未体験のサブウーファーである。
『ノーブス』とはラテン語で「新しいもの」「かつて存在しなかったもの」という意味だが、「マイクロプロセッサー制御プロセッシング・ルームアコースティック・コントローラー」という前代未聞のサブウーファーなのだ。(現在では、B&Oなど数社が同じコンセプトを採用している。)
革新的なノーブス (Stella NOVUS) のテクノロジー
サブウーファーは低音の質と量を改善する物だ。
近年、デジタル・テクノロジーの隆盛もあって、サブウーファーは大きな技術的進歩を見せた。
にも関わらず、サブウーファーの導入によって多くのリスナーの抱える低音問題は少しも解決に向かわないどころか、逆に、今まで気付かなかった低域の問題が顕著化することも多い。
なぜか? それはリスニングルームがもたらす問題だ。
波長の長い低域は指向性が広い(スピーカーからあらゆる方向へ放射される)ために、ほとんど部屋の反射音を聴いていると言っても良い。しかも、50Hz〜100Hzの波長が約6.8m〜3.4m、半坡が3.4m〜1.7m、2倍波が13.4m〜6.8mとなり、我々が普段使うリスニング・ルームの大きさに近くなる。すると、向かい合った壁や天井と床で音が反射し合い(共振や反共振)、特定の周波数で強まったり弱まったりする。
こんな状態では、いくら素晴らしい性能のサブウーファーを導入しても、音楽はちっとも楽しくならない。特定の周波数が強調されたダボダボした低音になってしまうからだ。
部屋の問題を解決するのは並大抵ではない。お金もかかるし、成功の約束はない。
そこで、電気的音響的にコントロールしてやろうということになる。
音響的にコントロールする例は、壁や天井に吸音材を貼ったり、床にカーペットを敷いて音の反射吸収を調整すること。そのためのアクセサリーもある。
電気的にコントロールする例は、グラフィック・イコライザーなど。
「ステラ・ノーブス」は電気音響的にコントロールするもので、世界初のマイクロプロセッサー制御の「プロセッシング・ルームアコースティック・コントローラー」だ。
デジタル・グラフィック・イコライザーのように静的な周波数特性をデジタル演算で電気的に平滑化する製品はある。しかし、これは音楽のようにダイナミックに変化する信号にはそれほど有効とは言えない上、音楽シグナルそのものに手を加えるため、音楽の持つ躍動感や艶が失われてしまう恐れがある。
「ステラ・ノーブス」は最も調整の難しい低域におけるルームアコースティックを、オリジナルの音楽シグナルに一切手を加えることなく電気音響的にコントロールする。そのため音質劣化がないばかりか、低域におけるリスニングルームの悪影響がキャンセルされるため、逆に、音楽の持つ躍動感や密度感、さらに音場の透明感や広がりが増す。この素晴らしい効果は中高域にまで及ぶ。
低域再生の理想は、ディープバスがボトムエンドまでしっかり延びて十分な量感があり、しかもタイトなことだ。この理想の実現はリスニングルームからの悪影響も絡み、至難であった。低域を延ばせばタイトさが失われ、タイトな低域を実現したければボトムエンドまでの延びが得られない。
そういうわけで、低域のタイトさを諦めたクラシック用とディープバスを諦めたジャズ用の大型スピーカー・システムが存在したのである。
低域の良質な再生はスピーカー・システムをいくら変えてもダメだ。80Hz以下での部屋の悪影響(共振・反共振・定在波)が支配的となるためである。
一般のサブウーファーを追加しても低域の量は増やせるが、質はなかなか向上しない。ダボダボした締まりのない低音となりがちだ。サブウーファーを嫌悪するオーディオファイルがいるのはそのためだ。
「ステラ・ノーブス」では、特殊なアルゴリズムにのっとった高速アナログ・レギュレーターをマイクロプロセッサーがバスシステムを通して制御することにより、低域における部屋の共振・反共振をキャンセルする。自分の出す音ばかりかメイン・スピーカー・システムが出す低音も含めた部屋の反応をも加速度センサーで常時検出モニターしてレギュレーターへフィードバックし、同時にウーファー・ユニットを最適制御する。
「ステラ・ノーブス」の追加により、ボトムエンドまで延びてはいるがルーズ(タイトの反対)な大型スピーカー・システムの低域を、延びを確保しながらタイトに改善し、タイトではあるがディープバスが出ない(出さない)大型スピーカー・システムの低域を、タイトさを保ちながらボトムエンドまで延ばすことができる。
マイクロプロセッサー制御MFB(モーショナル・フィードバック)アクティブ方式と軽量振動板の採用により、通常のアクティブ型に比較して50%以上の低歪化とローノイズ化を実現した。
低域における遅延(時間遅れ)がない、大変に反応の速いサブウーファーだ。
低域エネルギーを10Hzまで、条件によっては5Hzまでフラットに拡張できる。
リモコンにより、すべてのパラメーターを聴取位置で実際に聴きながら操作できる。
ステラ・シリーズのすべてスピーカー・システムをプリセット済み。
レスポンスが速く、豊富なパラメーターの自由設定による柔軟性が高いので、マンガー型、コンデンサー型、リボン型、ホーン型にもベスト・マッチする。
シングル使用も複数(2台、4台)使用も可能。室内の広い範囲で効果を発揮するためには多数使用が望ましい。最大音圧のヘッドマージン(余裕)を確保したい場合も同様。
人間の聴覚構造に類似した発音原理

◆ドイツ・マンガー研究所が30年にわたる研究開発から実用化したベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー (横波スピーカー)
スピーカーの常識を根底からくつがえしたフルレンジ・ユニット。20cm口径で、80Hz~32kHzを再生できる。常識とは逆の薄く柔らかい振動板を採用し、横波が中央から外側へ向かって波紋のように伝わる。
これは人間の聴覚のメカニズムと同じ原理だ。
理想的な音響出力

◆スピーカーへの電気的入力電圧(ステップ応答)

◆その時のスピーカーの理想的な音響出力

◆一般的なスピーカー・システムの音響出力
耳障りなパルス性ノイズが発生している。

◆マンガー・ユニットの音響出力
ほとんど理想の形! すべてのステラ・シリーズもこれに近い特性を実現。
『ハイファイ』と『心地よさ』は両立するのか?
かつて、ハイファイ(高忠実度)と音楽を聴く心地よさは両立しなかった。二者択一でどちらかを選択しなければならなかったのだ。しかし聴覚の仕組みを理解し応用することにより、史上初めてこれが可能になったのである。
そのためには、耳障りなパルス性ノイズを抑えれば良いのだ。
ゆったりと音楽へ没入する事ができる
パルス性ノイズは、我々の意識下に絶えず危険の警告を与え続けるが、これが存在しなければ、リスナーは音楽だけへ没入する事ができる。
超ハイファイにもかかわらず、音楽を聴きながら、ゆったりとリラックスすることができる。
素晴らしい音楽に浸りながらまどろむこともできるのだ。
PA装置を用いないクラシックなどの生のコンサートでは、良い気持になって眠くなるであろう。有害なパルス性ノイズが存在しないからだ。
スピーカー・システムの存在が消える
パルス性ノイズは、人間の聴覚に音源の定位(方向と距離)を認識させる。このノイズが発生しないので、スピーカー・システムを知覚できず、目を閉じるとスピーカー・システムの存在が消える。存在するのは音楽だけである。
小音量でも明瞭で、大音量でもうるさくない
有害なパルス性ノイズに楽音が妨げられないので、小音量でも音楽情報が明瞭に聴きとれ、逆に音量を上げてもうるさくならない。また、パワー・リニアリティーが良いので、アタックの伸びや抜けも大変良い。
打楽器や津軽三味線のアタックがスカーンと立ち上がり爽快だ。
楽器や歌い手が本来の密度や立体感を取り戻す
楽器や歌手などが元々持っているパルス性シグナル(定位を決定する過渡信号)は、スピーカー・システムからのノイズにマスクされる事なくそのまま再現されるので、楽器や歌い手の定位(方向と距離)が損なわれず、密度濃い音像が三次元音場の中に立体的に現出する。
音場空間はあくまで透明で広い
もし、CDやLPなど音楽ソースに演奏時の音場がうまく録音されているなら、ステラ・シリーズのスピーカー・システム による再生の音場空間はあくまで透明で広い。教会やコンサート・ホールの天井の高さまでも感知することができる。
入力シグナルを正確に再現し、音楽の美しさをありのまま伝える
パルス性ノイズは、スピーカー・システム自身の持つ、いわゆる『味わい・色付け・メリハリ感・刺激・パンチ・…』と言ったキャラクターにも貢献(!?)するが、ステラ・シリーズに、これらを求める事はできない。色付けが少ない事を新たな色付けと表現する人がいるかもしれないが…
このパルス性ノイズが存在しない事とトランジェント・レスポンス(過渡応答)の良さとが相まって、人間の聴覚にとって重要な情報である楽器などの立上がりに悪影響を与えることがない。入力ソースの情報を正確に再現するので、音楽や現実音などソースの持っている美しさや醜さ、優しさや激しさをデフォルメする事なく、ありのままリスナーへ伝える。
ソース、アンプ、ケーブルなど接続された他の機器の特徴を明確に表現するので、モニター・スピーカーとして最適でもある。
ステラ・ノーブス (Stella NOVUS) の仕様
「マイクロプロセッサー制御 プロセッシング・ルームアコースティック・コントローラー」というサブウーファー
リスニングルームの悪影響をハイテク技術により調整する・・・本物の低域再生への福音!

*2000年ステレオサウンド誌 ザ・ベストバイ選出*
*2001年ステレオサウンド誌 ザ・ベストバイ選出*
2000年当時の1本価格(リモコン付属) :
800,000円(ラッカー仕上げ)/ 720,000円(マット仕上げ)
仕様:
周波数特性:10~500Hz (-3dB)
感度:96dB/W/m 相当
消費電力:
スタンバイ時 3VA
無信号時 10VA
最大出力時 350VA
外形寸法(WxHxD mm)/重量:
本体 370x635x420/30kg
*惜しまれながら生産終了し完売。恐らく中古市場でも入手困難であろう。これを手放す者がいるとは考え難い。
ステラ・シリーズ用に開発したこのバイオセルロースのトゥイーター(日本のフォスター電機製造)は再生周波数が 300Hz~45kHz (-10dB) と大変ワイドレンジだ。その再生音は、クリアーかつ繊細でしかも柔らかい。トランジェント(立上がり、立下がり)が素晴らしく、しかも大音量時でも耳を刺すような嫌な刺激音が出ない。ヴァイオリンの擦れ音を魅力的に響かせながらピアノの強烈な打鍵や打楽器の立ち上がりも見事に出す。しかも声の温かさと浸透力という相反する要素も同時に表現できるのだ。耳の確かな音楽家に愛される所以だ。恐らく、多くのリスナーにとって、これまで未体験のもののはずだ。(詳しくは音質の項参照)
*筆者はオーディオ技術アドバイザーとして、スイス・アクースティック・ラボ社『ステラ・シリーズ(Stella)』の研究開発とそこで使われている トゥイーター(高音用スピーカー・ユニット)の設計に関わった。以下は、そこで得られた研究成果とノウハウの一部である。
有害なパルス性ノイズを出さない
スイス・アクースティック・ラボ社のステラ・シリーズは全く新しいオーディオ理論を背景にして生まれた。フラッグシップ・モデルのステラ・エレガンスは、ドイツ・マンガー研究所が開発したユニットを使用する。このマンガー・ユニットはパルス性ノイズを発生しない。(マンガーの項参照)薄く軽く柔らかい振動板にベンディング・ウェイヴ(横波)を発生させる、今までのスピーカーとは発音原理が基本的に異なるのだ。
2番目のステラ・オパス以下には、すべて新開発のユニットを使用している。
トゥイーター(高域用スピーカー・ユニット)は「バイオセルロース+カーボン繊維」という軽くて強じんな素材を大きめ逆ドームで使用し、強力なネオジム・ダブル・マグネットの磁気回路で駆動する。
トゥイーターは大変ワイドレンジ:再生周波数は 600~25kHz (-3dB)、300~45kHz (-10dB) 。
ウーファー(低域用スピーカー・ユニット)は、自然材のパルプを逆ドームに成形したものを小さめの口径で使う。軽い振動板を強力な磁気回路で駆動することにより、初動が速く、空気と強力な磁気回路の制動によりオーバーシュートが起こりにくい。
つまり、音楽鑑賞に有害なパルス性ノイズをほとんど発生しないのだ。
新しいバスレフ理論
小口径ウーファーは反応が速い反面、低域の量感不足となりやすい。
ここでも新たなテクノロジーが導入された。
ドイツのアーヘン工科大学で研究された新共振理論の応用により、バスレフ(低域共振補強)を新設計したのだ。これにより、今までの音響学の常識と物理学の法則をくつがえすような、ユニット口径からは不可能な深々とした低域の量感と締まりの良さとを両立できた。どのモデルもディメンション(大きさ)が信じられないスケールの大きな再生音を実現しているのはそのためだ。特許の関係から余り詳しくは書けないが、実はエジソンから始まった長い音響工学の歴史上での低域再生の革命とも言えるものなのだ。
理想的なトゥイータ用振動板:バイオセルロース
世界中でスピーカー・メーカーが木材パルプに替わる振動板の新素材を開発している。ポリプロピレンなどの高分子材、チタンやベリリウム合金などの金属、その他ダイアモンドやセラミックなどなど、ありとあらゆる素材が実用化された。そのどれもが実は「帯に短し、たすきに長し」なのだ。ある点では傑出しているが他の点ではダメというように、長所短所がはっきりしている。
バイオセルロースは酢酸菌の作る超微細繊維(直径0.05ミクロン以下で綿など植物繊維のなんと1/1000)で繊維相互の結着力が大変強く、振動板としての曲げ剛性(固さ、強さ)は航空機に使われるハニカムなみ、伝搬速度(音速)はアルミやチタン以上、内部損失(tanδ、叩いた時の音のしにくさ)は紙パルプなみと理想的だ。しかもプレスすると繊維どうしが複雑に絡みあって固着し、音や環境に有害な接着剤が不要なのだ。
バイオセルロースにカーボン繊維を混ぜたものはトィーター用素材としてはさらに理想的である。一般的に、カーボン繊維を混ぜると嫌な音が出がちだが、微細なバイオセルロースに包み込まれて擦れ音が出ない。カーボン繊維の良い面だけを利用できるのだ。
素材内での「音速×剛性×内部損失」を比較したデータを示そう。数値が大きいほど、トゥイーター用振動板材料として優秀なことを示す。ボロンやダイアモンドのトィーターは素晴らしい音がするが、「バイオセルロース+カーボン」はそれらをも大きく引き離す断トツの値だ。音が良いのにはそれなりの理由があるという証拠だろう。
では、なぜもっと使われないのか(実は、高級ヘッドフォンの振動板としては使用例があるのだが…)? 何しろバクテリアの尻尾(べん毛)を集めた物なので、製造が難しく時間がかかる。その上、生き物のために取り扱いが難しく、精密な工業製品として利用するには面倒なプロセスと高度のノウハウを必要とする。製造工程で厳しい品質管理をして性能を安定させても、左右の特性を揃えるためのペアリングがどうしても不可欠だ。
これらは全てコストアップ要因となり、ビジネスとしての旨味がない。
さらに、2009年現在、この革新的振動板素材は入手困難となっている。
『音』に対する誤解がオーディオの進歩を阻んでいた
かつて、『音』とは空気の疎密波だと理解されていた。これは間違いである。人間が知覚しないなら『音』は存在しない。それは単なる空気の疎密波(音波)だ。
音波を人間が耳でとらえ聴覚がシグナル化して神経経路を通して脳へ伝達する。そのシグナルを脳が認識・分析・再創造して、初めて『音』が存在するのだ。空気の疎密波(音波)はその複雑なシステムの一部でしかない。
例えば、2台のステレオ・スピーカーの真ん中で歌手が歌っているとしよう。我々にはそう聞こえるが、そんな所から音は出ていないし、ましてや歌手が立っているわけではない。
でも我々は歌手がそこで歌っているようなイリュージョン(幻想)をいだく。つまり、このイリュージョンこそが我々にとっての『音』なのだ。
このイリュージョンが鮮明であればあるほど、我々は実在感を感ずる。
つまり、これこそが本当のハイファイ(高忠実度)と言えるのだ。
『音』や映像は頭の中で構築されるイリュージョン
同じ空気の疎密波(音波)を他人が同じように認識している保証はどこにもない。
視覚も同様。赤は赤、上は上、と誰でも同じように認識する…と思われていた。
長い波長の光が赤、短い波長の光が紫であると…
では、青(短波長)に赤(長波長)を混ぜるとなぜ紫(青よりさらに短波長)に見えるのか? 物理的には間違いだ。
色を含めた視覚もどうやら頭脳が作るイリュージョン(幻想)のようだ。
でも、赤は赤、上は上、と誰でも同じに感じるではないか!
それが違うのだ。
壁を真っ赤に塗った部屋に2週間ほど閉じこもっていると、壁が白く見えるようになる。
赤く塗った木と一緒に暮らすと、やはり2週間ほどで緑に見えてくる。
特殊なレンズのメガネで上下を逆さまにして2週間ほど経つと、普通に暮らせるようになる。メガネを取って正常に戻すと、何と上下が逆さまに感ずる。
つまり、視覚上の色や上下なども我々の感覚であり、物理現象とは同一ではないのである。
今までの努力は間違いだったのか?
今まで我々音響エンジニアは音を物理現象と理解していたため、スピーカーから出る音波の質を上げる努力ばかりをしてきた。歪みが少なくなるように、ノイズが出ないように、広い周波数帯域をカバーできるように、などなど…
その結果、素晴らしい測定結果を実現できるようになった。しかし、それで本当に音が良くなったのかというと、残念ながら疑問なのだ。
50年も昔に作られたスピーカー・システムを今聴くと…恐ろしいことに、なかなか良い。それどころか、例えばウェスタン製など昔のスピーカーを熱烈に愛好する人たちさえいる。
「我々は50年間一体何をしていたのか?」という疑問が湧く。理論を深め、測定技術を磨き、新素材を開発し、製造技術を進歩させ… その努力と投資たるや、大変なものであった。
どうやら、エネルギー投入の場所が間違っていたと認めざるを得ない。
『音』を良くするためには聴覚の研究が不可欠
我々は測定データを聴くわけではない。
人間の聴覚は良く分かっていなかった。本当は、分かっていたのだが、それがオーディオに反映していなかった。しかし、人間の感ずる『音』が音波と同一ではないことが明らかになった以上、聴覚を理解せずに良い音は語れない。
この分野での研究が遅れていたのにはそれなりの理由がある。それは心理要素が入ってきてデータ化が難しいため科学志向のエンジニアが嫌ったからだ。
しかし、ようやく様々なことが分かってきた。
聴覚は危険を察知するために発達
人間を含めた動物の五感は、充ち満ちる危険の中で生き延びるために、その危険をいち早く察知する危険センサー/アラーム・システムとして発達した。聴覚も同様である。
聴覚の情報には実は2種類ある。
第1はパルス性の高周波(超音波)で、これにより音源の定位(方向と距離)を知る。
第2は我々が普通に『音』と感ずるもので、これによって危険の内容(トラなのか、恐竜なのか、敵なのか…)を知る。
枯れ葉を踏む「カサッ」という音、小枝が折れるときの「ポキッ」という音、これらにはパルス性の高周波成分が沢山含まれている。これにより危険が迫っていることを瞬間的に知り、その方向と距離を直感的に察知するのだ。生き延びるために、反射的に反対方向へ逃げる。方向を間違えれば、恐竜に食われるのだ。間違えたヤツは生き延びれず淘汰された。我々は間違えなかった種の子孫なのだ。
このパルス性シグナルは耳から脳までの神経経路において30倍にも増幅される。そうやって生き延びてきたわけだ。
誰かの頭の後ろで、衣ずれの「シャッ」とか紙をくしゃくしゃにする「カサッ」というかすかな音をたてるとハッとするのは、そういうわけなである。もっと大きな音より、よほどハッとするだろう。
しかもこのパルス性シグナルは人間の覚醒意識では認識できない。反射の領域なのだ。頭脳が分析しているわけではない。「ハッ」とするというのは、そういうわけなのである。
何が問題なのか?
この第1の音波(高周波)は、今までの音響研究者やエンジニアにとって完全に無視されていた。
例えば、CDの規格では再生周波数の上限を2万ヘルツに設定したが、「それ以上はどうせ聞こえないから」という理由であった。一方、スピーカー技術者にとって2万ヘルツ以上のことは、設計上考える必要が全くなかった。
これで何が問題なのか?
まず、音楽の中で楽器や声が発する方向・距離情報が不足する点。
しかし、もっと重要なのはオーディオ装置(特にスピーカー・システム)から発生していた高周波ノイズを見過ごしていた点だ。
従来のスピーカー・システムは音域を拡大するために複数のユニットを使用する。いわゆるマルチ・ウェイというタイプである。低域用+高域用なら2ウェイ、低域用+中域用+高域用なら3ウェイ、低域用+中低域用+中域用+高域用なら4ウェイ、低域用+中低域用+中域用+中高域用+高域用なら5ウェイ、というわけだ。
このマルチ・ウェイを嫌って、かたくなにシングル・コーンのフルレンジ・タイプを支持する人達がいる。帯域は狭いが「音が素直で実体感がある」と言うのだ。
事実その通りなのだが、これは一体何なのだろう?
スピーカー・システムが有害な「パルス性ノイズ」を出していた!
マルチ・ウェイは複数のユニットが一体となって一つの音波を構築しなければならない。低域用(ウーファー)は大きくて重い、高域用(トゥイーター)は小さくて軽い、中域用(スコーカー)はその中間と、物理条件が異なるのでこのコラボレーションは大変難しく、実際には実現不可能である。大きくて重くて動作の鈍い男性と小さくて軽くて機敏な女性とは一緒にダンスを踊れないのだ。(比喩がまずいか?)
では何が起こるのか?
まず、それぞれのユニットでの音波のタイミングがずれてしまう。(ダンスなら足を踏んづけてしまうということか?)
第2は、信号が無くなってもパッと止まれずにオーバー・シュート(行きすぎ、過剰振動)を起こす。
なぜそれが有害なのか?
これらが、実は周波数の高いパルス性ノイズとなるなのだ。(次項の図を参照)
今までは、そんな高い周波数は聞こえないと思われていたので無視された。しかし、聴覚の機能を研究すると、実はこれが我々に危険を知らせるアラーム信号だということが分かる。つまり、スピーカー・システムがリスナーに「危険が迫っているぞッ!」という心理的警告を絶えず発しているようなものなのだ。しかもそれが無意識または潜在意識へ働きかけるので根が深い。
多くの人が、「オーディオの音は聴き疲れして長時間聴いていられない」と言うのには、それなりのちゃんとした理由があったのである。
シングル・コーンを好む人にも人間の生理に即した正しい理由があったのだ。
またこのパルス性ノイズは、音源の定位(方向と距離)を認識させるので、リスナーにスピーカーの存在を絶えず主張する事になる。目をつぶっても両スピーカー・システムの位置が分かるようなら、このパルス性ノイズが盛大に出ている証拠だ。
文責:山脇正俊
『近自然(工)学(環境と豊かさの両立原則)』提唱・研究
スイス近自然学研究所代表
北海道工業大学客員教授
SADO専門学校 ユニバーサルアドバイザー
スイス連邦工科大学・チューリッヒ州立総合大学講師:武道
環境・オーディオ コンサルティング
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