肺の動静脈瘻は、遺伝性毛細血管拡張症(HHT、オスラー病)での合併がよく知られています.脳梗塞・脳膿瘍・呼吸不全・胸腔内出血などの原因になります.詳しくは別項(HHT肺動静脈瘻)を参照してください.

 

実際にどのようにコイルで詰めるのか?聞かれることがあります.基本的な手技を紹介します.治療は局所麻酔で行います.場合によっては、全身麻酔をしますが、大人ではその必要は通常ありません.脚の付け根に局所麻酔をして、シースをいう短いカテーテル(10-15 cm長)を大腿静脈に入れます.次いで、そのシースを介してバルーンの付いたカテーテル(100-110 cm 長、太さ 2 mmテ程度)を大腿静脈、下大静脈、右心房、右心室、肺動脈に進めます.痛くもありませんし、カテーテルが通過していることも分かりません.病変がある右または左の肺動脈にカテーテルの先端を進め診断の造影を行います.このカテーテルを親カテーテルとして、その中に子カテーテルのマイクロカテーテル(150 cm長、太さ1 mm程度)を病変(動静脈瘻)部まで進めます.場合によっては、バルーンは付いていない、もっとしっかりしたカテーテルに交換してから、マイクロカテーテルを進める場合もあります.ここでプラチナ製コイルを用いて病変を閉塞して手技は終了です.プラチナ製のコイルは、金属ですが、柔らかく絹糸のようなコイルから、もう少ししっかりしたものまであります.しっかり閉塞するためにコイルに繊維が付いたものもあります.病変が複数ある場合は、ひとつひとつ閉塞します.術中に血栓が飛ばないように、私は全身の抗凝固(血が止まりにくくする)を行うべきだと考えていますが、これに関して決まったルールはありません.

 

細かいことですが、病変の閉塞の仕方ですが、瘻をきちんと閉塞しなければ、つまりその手前の細い肺動脈の部分でのみ閉塞すると再発することがあります.つまり、手前で閉塞しているため、その閉塞部位より末梢の側副路から瘻が栄養され続けることがあるからです.再発の原因はほとんどがこの近位部閉塞です.瘻が大きいとコイルが瘻を抜けて肺静脈側に飛んで行く可能性があります.これは、左心室、大動脈につながっているので、そこから脳も含め、全身にコイルが飛んで行く可能性があります.こんな事態にならないように工夫をします.親カテーテル先端のバルーンを膨らませ血流をコントロール(止めて)しながらコイル塞栓術を行ったり、瘻を抜けないようなサイズのコイルを選択することです.離脱式コイルであれば、抜けそうであればそのコイルの使用をやめたりコイルの位置を変更することが可能です.

 

使うコイルにも多数の種類があります.カテーテルから押し出すタイプ(押し出し式コイル)と、きちんと場所を決めてからコイルを切り離すタイプ(離脱式コイル)です.前者は一方通行で、手技の途中でコイルをカテーテル内に戻すことは出来ません.後者はいつでもカテーテルの中にコイルを回収できより安全です.当然、私は後者を使用します.

 

治療時の可能性のある合併症には、コイルの逸脱(瘻を抜けてしまいます)、肺出血(動脈や瘻を破いてしまいます)、肺梗塞(正常な肺の動脈も閉塞してしまいます)、感染症(異物を入れるため)、脳梗塞・脳膿瘍(治療時に血栓やバクテリアが脳へ飛んで行く)などがあります.

 

実際の閉塞手技の写真です.この患者さんは、肺の動静脈瘻の症状はありませんでした.ですから予防的治療を行ったことになります.無症状ですから、当然、見かけは何も良くならないわけですが、脳梗塞や脳膿瘍の心配がなくなり少し元気になったようにも見えました.

 

図1:右の肺動脈造影で3つの動静脈瘻が認められます.1は下葉に、2と3は中葉に病変があります.この順に閉塞しました.

図2:下葉の病変(1の病変)のコイルによる閉塞前のマイクロカテーテルからの選択的造影.マイクロカテーテルをさらに瘻部まで進めます.A:マイクロカテーテルの先端、B:親カテーテルの先端です.

図3:最初のコイルです.出来るだけ瘻に置く、飛んで行かないなどの工夫が必要です.この部位でよければコイルを切り離します.(この場合は、コイルに付いた線を回転させ切り離しました).

図4:下葉の病変のコイルによる閉塞後の造影.動静脈シャントが消えています.

図5:中葉の病変(2の病変)のコイルによる閉塞前のマイクロカテーテルからの選択的造影.

図6:中葉の病変(2の病変)のコイルによる閉塞後の造影.動静脈シャントが消えています.

図7:中葉の病変(3の病変)のコイルによる閉塞前のマイクロカテーテルからの選択的造影.瘻への動脈が2本あるのが分かります.

図8:中葉の病変(3の病変)のコイルによる閉塞後の造影.動静脈シャントが消えています.

 

3病変ともコイルの先端は瘻内にあり、瘻の再発の可能性は非常に低いです.


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2006.8.19記、2007.8.25追記
















































 

肺の動静脈瘻 (実際の治療手技)

 
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