23年目の夏が来る
 
 毎年、クリスマスの時期になると必ずしているのが、ディケンズの『クリスマス・キャロル』を読み返すことと、クリスマス映画『3人のゴースト』を観ること(年によって読み返すのが東野圭吾『サンタのおばさん』になったり、映画が『34丁目の奇跡』になったりするが)。
 同様に、夏になると読み返したくなるのが、『クライマーズ・ハイ』、そして『墜落遺体』。お察しの通り、あの日航123便墜落事故に関する本だ。
 
 高校3年の夏のあの事故。夜中のテレビで、真っ暗な山中に浮かび上がるオレンジ色の炎の映像を映し続けるニュースステーションを、なぜか家の中で突っ立ったまま見ていた自分を今でも鮮明に覚えている。未だにあの衝撃を忘れられないのは、おそらく、記憶しているなかで初めての、未曾有の大事故だったからか。
 アメリカ国民なら誰でも、ケネディ大統領が暗殺されたあの時、自分が何をしていたかを鮮明に覚えていると言われるが、それに近い感覚かもしれない。
 
 言わずと知れた横山秀夫の大傑作『クライマーズ・ハイ』は、あの事故の取材指揮を任されることになった地方紙記者の社内外での攻防と人間同士の葛藤の物語。一旦読み始めたら、ページを繰る指が止まらなくなり、何度も何度も胸に熱いものがこみ上げてくるぞ。
 もう一方の『墜落遺体』、こちらは実際に事故犠牲者の身元確認を指揮した元警察官による、当時の現場の状況や身元確認に至るいくつもの真実の物語を伝えるノンフィクション。実際に携わった人でないと書けない、あまりに重すぎる事実には唯々頭を垂れ、胸を塞がれてしまう。
 遺族、救助にあたった地元の人々や自衛隊、警察、病院関係者、身元確認担当、日航職員、マスコミ……たくさんの人たちがそれぞれの立場で、懸命にあの大事故に翻弄されながら立ち向かっていたのだ、ということがこの2冊からぐさりと突き刺さるほどに伝わってくる。
 
 今年も8月12日を間近に控え、『墜落遺体』の著者が書いた、事故から十数年後の遺族をはじめとする当事者の証言集『墜落現場 遺された人たち』を読んでいる。こちらも深い感慨を与える内容だ。
 そして、来週には映画『クライマーズ・ハイ』の公開が。主演、堤真一。佐藤浩市主演のNHKドラマも熱い傑作だったが、映画でしか成し得ない何かに期待して、絶対に映画館に足を運ぼうと思っている。
 
 
2008年7月1日