高校3年の夏のあの事故。夜中のテレビで、真っ暗な山中に浮かび上がるオレンジ色の炎の映像を映し続けるニュースステーションを、なぜか家の中で突っ立ったまま見ていた自分を今でも鮮明に覚えている。未だにあの衝撃を忘れられないのは、おそらく、記憶しているなかで初めての、未曾有の大事故だったからか。
アメリカ国民なら誰でも、ケネディ大統領が暗殺されたあの時、自分が何をしていたかを鮮明に覚えていると言われるが、それに近い感覚かもしれない。
言わずと知れた横山秀夫の大傑作『クライマーズ・ハイ』は、あの事故の取材指揮を任されることになった地方紙記者の社内外での攻防と人間同士の葛藤の物語。一旦読み始めたら、ページを繰る指が止まらなくなり、何度も何度も胸に熱いものがこみ上げてくるぞ。
もう一方の『墜落遺体』、こちらは実際に事故犠牲者の身元確認を指揮した元警察官による、当時の現場の状況や身元確認に至るいくつもの真実の物語を伝えるノンフィクション。実際に携わった人でないと書けない、あまりに重すぎる事実には唯々頭を垂れ、胸を塞がれてしまう。
遺族、救助にあたった地元の人々や自衛隊、警察、病院関係者、身元確認担当、日航職員、マスコミ……たくさんの人たちがそれぞれの立場で、懸命にあの大事故に翻弄されながら立ち向かっていたのだ、ということがこの2冊からぐさりと突き刺さるほどに伝わってくる。