「にょ。」っちゅう歳ですか?
 
 
 再び、氷室冴子の原作である。山内直美の「蕨ヶ丘物語」を紹介しよう。
 北海道のド田舎、蕨ヶ丘には名家権藤家が君臨していた。権藤家には、4人の姉妹、長子、次子、待子、末子がいたが、誰もが跡継ぎの運命から逃れようと必死だった。
 待子は、17歳の高校生だが、学校では権藤家に忠誠を誓う校長の目があり、ボーイフレンドの一人もできない。男子は、校長の目を恐れて、待子に近づくことさえ恐れる有様である。そんな待子につきまとうのは上邑三四郎だけだが、彼は泣き虫な中学生、年下なのだ。待子の祖母は、彼女に悪い虫が付かないように、婚約者をつけようとするし、どうする待子!
 これは、4つのストーリーからなる本作品の最初のエピソードだが、原作では3番目のエピソードである「純情一途恋愛編」に相当する。マンガ化にあたって、読者の食いつきが良いように、高校生が主人公のエピソードを最初にもってきたのかも知れない。
 原作は、しきたりにうるさい田舎の名家を思いっきりよくデフォルメして、主人公の女の子たちの置かれた立場を面白おかしく描きだしている。しかも、4つのストーリーは、サブタイトルで判るように別々のテイストに仕上げている。実に、ストーリーテラーたる氷室冴子の面目躍如といったところである。
 山内直美によるマンガ化は、原作にほぼ忠実で、氷室冴子の世界を壊していない。しかし、マンガならではの部分もある。例えば、権藤家の強烈なおばあちゃまであるが、マンガでは、そのデフォルメが絵柄となって現れるので、原作以上にデフォルメされた感じでコメディを一層盛り上げている。また、「ライト・ミステリー編」での、末子とクラスメートの美年子(実はこっちが主人公)の掛け合いなどは、マンガの方が良く合っているような気さえする。そもそも、この手のコメディでは、そのテンポを保つのには小説よりもマンガの方に分があるのだ。それにしても、山内直美の手際は鮮やかだ。
 山内直美は、この作品の後も、「雑居時代」「ざ・ちぇんじ!」「なんて素敵にジャパネスク」と氷室冴子の作品を次々とマンガ化しており、現在も「なんて素敵にジャパネスク 人妻編」を連載中である。氷室作品と山内直美の相性がどれほど良いかということが判るだろう。他の作品は複数巻におよぶので、まずは本作品「蕨ヶ丘物語」で氷室冴子と山内直美のタッグの面白さを確かめてみてはいかがだろうか。
 
<おまけ>
 「純情一途恋愛編」で、三四郎が待子をさそう映画が、原作では「スーパーマンIII(1983年公開)」なのが、マンガでは「ネバーエンディング・ストーリー(1985年公開)に変わっている。ほんの2年違いだけど...今、マンガ化されていたら「ハリー・ポッター」とかになっていたのかなぁ。
 
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[コミックスデータ] 山内直美/原作 氷室冴子
 蕨ヶ丘物語
  花とゆめCOMICS / 1986年6月25日発行 / 白泉社 / ISBN4-592-11803-0
  [収録作品]
   蕨ヶ丘物語           :昭和60年花とゆめ5月増刊号
   蕨ヶ丘物語:ライト・ミステリー編:昭和60年エポSeptember号
   蕨ヶ丘物語:大正ロマン編    :昭和60年エポNovember号
   蕨ヶ丘物語:ラブ・コメディ編  :昭和61年エポFebruary号
   わたしのすきなもの       :描きおろし
 
[原作データ] 氷室冴子
 蕨ヶ丘物語 / 1983年6月15日発行 / 集英社文庫コバルトシリーズ 52-P / ISBN4-08-610667-1
 
2007年3月18日日曜日
蕨ヶ丘物語 山内直実