寒さ故の珍事?
 
 去年の夏に車をぶつけられて以来、大小さまざまな災難が続き、年末には、40年以上の人生で初めて骨折を経験した。自虐を込めて「災難のデパート」と称している。年が明けてもその傾向は続いているようで、今シーズンの最低気温を記録した1月19日には灯油タンクが凍って室内が氷点下になるという「身も凍る」事件が発生したが、その直後、それを上回る「大珍事」が起きた。
 事件の発端は、続いていた真冬日が一息ついて、最高気温がプラスになった日の朝だった。同居人のS氏が出勤するとき、トイレの便槽のまわりの雪が茶色く変色しているのに気づいた。古い便槽なので、凍上で亀裂が入っており、あふれそうになった内容物が、じわじわと滲みだしてきているようだった。あわてて清掃社に電話し、汲み取りにきてもらうことで問題は解決するはずだった。ところが‥‥。
 なぜかこの時期に「混んで」いるらしく、汲み取りがくるのは一週間後だという。そしてこの時点から、トイレのにおいが室内に充満するようになった。二月に入ってからもマイナス20℃を下回る日が何日かあったので、臭突の上についているファンが凍りついて回っていないのではないかと思い、ガスバーナーで軽くあぶってみた。放っておいたらモーターが焼きついてイカレてしまうからだ。
 じっさいにやってみると、ちかくの壁にくっついている古いクモの巣が気流で揺れているので、臭突は機能している(ファンが回っている)ことがわかった。では何故に臭いが抜けないのだろう。答えは、汲み取り屋さんがきたときにわかった。
 朝、事務所でパソコンに向かっていると、外でなにやら物音がする。石ノミで石材を刻んでいるような金属的なキーンキーンという音だ。何ごとかと外に出てみると、汲み取りにきた清掃社の方が、鉄の棒で便槽のなかを突いているのだ。便槽の蓋のすぐ下に、厚い氷の層ができて、ホースが入らないらしい。写真のコンクリの升の内部が氷で詰まっているということだ。
 つまり、臭突(写真真ん中の細いパイプ)の直下にできた氷の層で蓋をされてしまって、便槽内の臭気は逃げ場がなくなり、部屋内に充満しているという訳だ。臭突の下部をふさいでいる氷の層を割らなければ、臭いは抜けないということである。
 汲み取り屋さんが帰ってから便槽の蓋を外してみてオドロイタ。厚さ30センチほどの褐色の氷の層が、蓋の下にできている。この氷の層は、臭突と二階トイレの排出口(写真左の太いパイプ)の下部も覆っている。この厚い氷の層を割らないかぎり、部屋内に充満するトイレ臭は抜けない。ここ数日ほおっておいたせいで、アンモニア臭で目が痛くなるほどになっている。
 まず思いついたのは、臭突のパイプの上からお湯を流して氷を融かす方法だった。椅子を台にして手を伸ばすが、上まで届かないということがわかり、あきらめた。仕方なく、便槽の蓋をはぐって、氷を割ることにする。お湯をかけてすこし柔らかくしてから、木の棒で突っついてみた。氷漬けにされていたモノがお湯で還元され、異臭が漂うのは我慢できるが、力を入れて突くと、還元されたウ○コがあたりにが飛び散って、危険きわまりない。服にでもついたら、二度と着れなくなってしまう。
 いい方法が思いつかないうちに夕方になり、家に入るが、時間が経つにつれて、アンモニア臭がトイレから風呂場、風呂場から台所と居間にも漂ってくるようになった。ここは一念発起して、氷を割らなくてはならないと決意する。
 お湯をかけて柔らかくせずに、厚い氷を割るにはそれなりの道具がいる。まず使えそうなのが、登山用のピッケルだが、「岳人の魂」でウ○コを突くわけにはいかない。なにかないものかと工具室に入る。解体用の大きなバールが使えそうだったので、申し訳ないが、これで氷を割ることにした。
 便槽の蓋をあけてバールを突っ込み、ハンマーでバールの頭をたたきながら、氷の彫刻のように、凍ったモノを削っていく。が、角度が急すぎて、臭突直下の氷を割ることはできなかった。さて、どうしたものか……。
 臭突のパイプが外れればなぁ……、ん、そうか!パイプを外せばいいのだ。そこで、パイプの根元をプラスチックハンマーで軽くたたき、パイプをずるずると上に引き上げてみる。ポコッとパイプが抜け、根元に詰まっている氷の層が見えた。ハンマーで突くと、氷の塊が便槽に落下した。やった!成功だ!
 めでたく臭突は貫通し、家中に充満していたアンモニア臭が、徐々にではあるが、抜けているように感じる。いやはや、苦労したわりにはあっけない解決だったが、これにて一件落着。でも、次はいったいどんな災難が待っているのだろう。
褐色の氷との格闘
2008年2月7日木曜日
左から、便槽の蓋、臭突、二階トイレの排出管